「ギャラリー島田」で、林哲夫さんの作品展がもうすぐ開催される。これまでとは違った、ちょっと変わった趣向。
〒650-0003 神戸市中央区山本通2-4-24リランズゲートB1F・1F
TEL&FAX 078-262-8058 メールアドレス:info@gallery-shimada.com

林哲夫作品展:父の仕事場 12/8(土)〜19(木)
父がいなくなったあと、納屋の梁に妙なものがのっているのに気がつきました。ところが、三メートルほども高さがあります。にわかにどうすることもできず、そのまま放置しておきました。十年が経ち、母も去りました。母が守ってきたものをひとつひとつ引き剥がすように古家の片付けを始め、ようやく梁の上の物体を降ろしてみました。何とそれは鳥が捨てた空巣でした。今展ではその「空=クウ」(巣)を描いた油彩画などに加え、父の仕事場に残っていた道具類を、ピュアなオブジェ「作品」として並べてみたいと思っています。 林哲夫
会場:1F deux&trois
会期:12月8日(土)〜 12月19日(水)
11:00-18:00
※最終日は16:00まで
国立「増田書店」で、来年のスケジュール帳を買い、ついでに「波」11月号をもらった。七組の「対談特集」、村上春樹インタビューと豪華な内容。ただ、その対談に登場する半分は知らない人、あるいはプラス興味のない人が多く、いよいよ自分が世間の流行から周回遅れでロートル化していることを実感する。これが、いま新潮社が、こういう特集を組む時に選ぶ(書き手として尊重する)人たちなのか。うーん、と目次を見ながら路上で立ち止ってしまった。年寄りは引っ込んでなさい、と言われたようで「遠い世界に旅に出ようか〜」と口づさむ。ぼくの文学センスのよって立つ場所は、30年以上古いらしい。

10年以上ぶり(ひょっとして20年近い?)に、北村薫『秋の花』を読み、大いに感銘を受ける。だいたいのストーリーと、あざやかな(意外な)謎の真実は覚えていたが、ほか、ほとんど忘れている。円紫の登場はこんなに後の方だったか。この円紫と私シリーズで、私が住む町は、どこどこと具体的に記されていないが、著者の出身が埼玉県杉戸町であり、春日部高校卒で、同校の国語教師を務めていたことから、だいたい類推できる。この作品でもヨーカドーが登場するが、東武動物公園駅前のヨーカドーであろう。ただし、現在「ベルク」と名を改めている。本書のラスト、円紫と私がタクシーに乗って(追記/タクシーではなく、借りた車でした)、自殺しかねない少女を追って東へ走るシーン。4号バイパスを越え、江戸川まで行くことでも、杉戸町かいわいと分る。16号線を西進したのではないか。江戸川を越えると、千葉県である。解説とは別に、久世光彦が扉に短いオマージュの文章を捧げているが、これもいい文章だ。「私」は、度を越した読書家の女子大生だが、伊藤整「鳴海仙吉」まで読んでいるのには驚いた。文庫版にはカラー口絵で「秋海棠」の花の写真があるが、この花が重要な意味を持っている。何度か、この写真を見返した。そうか、そんな意味があるのか。それも忘れていた。設定は10月終わり頃の話のようだが、いま(11月終わり)読んでも、じゅうぶん、雰囲気に浸れるはずだ。忘れようとて忘れられない一作である。
BSでずっと放送される山田洋次監督作、「幸せの黄色いハンカチ」「遙かなる山の呼び声」を、いったい何度見れば気が済むんだというくらい、また見た。出て来る俳優がみんないい。「遙かなる」で、倍賞の家を手伝いに来る少女は大竹恵は、大竹しのぶの妹だ。今回、初めてそう気づく。

「大人の休日」倶楽部パスを購入(連続4日有効、新幹線を含めJR東日本と一部ローカル線乗り放題)。あれこれ計画をたてる。一日目は夫婦で、20年ぶりぐらいで桐生へ。ここに大川美術館という、松本竣介のコレクターによる私設美術館があり、いま、松本竣介のアトリエを再現した展示がされている。これを見よう、というわけだ。「雄文堂」はちゃんと空いてるかしらん。水沢「白神堂」へも行きたい。南伊東の「岩本書店」と、けっきょく古本屋がらみの旅になりそう。あれこれ調べ、熱中し、ほかのことが疎かになるのはいつものこと。
夜はひさしぶりに牧野邸におよばれ。編集者、知人の牧野組と土鍋でおでんを囲みながら、日本酒をくいくい空ける。最初ビール、次に一升瓶の封を切ったのがほとんど4人であっというまに空き、また日本酒。ふつう、これだけ日本酒を飲むと、ぼくはたいてい酩酊するのだが、この夜はなぜかシラフに近く快調。よほどいい酒、いい時間であったのだろう。牧野さんが編集、あるいは絵とデザインを担当する「雲のうえ」「飛騨」をもらう。「雲のうえ」巻末には、前号を読んだ読者からのハガキが掲載されているが、ぼくの書いた原稿が好評のようで、大いに鼻を高くする。がんばって書いた甲斐があった。
北村薫「秋の花」を、いったいいつぶりだろう、再読し始める。ガールズタッチが、少し気恥ずかしい部分もあれど、ああ、この世界だと没入する。
このところ、朝食後、うちに二匹いるうちの、黒のネコの方が地下へ降りてきて、パソコンに向うぼくの太ももと腰の上に乗り、まったりする習慣ができた。ときどきなでてやると、シッポを振って、ぐるぐる喉を鳴らしている。ぐにゃぐにゃした、あったかい懐炉を抱いているようなり。
備忘録
世田谷ピンポンズくんのライブで同席した、神保町「ぶらじる」マスター竹内くんの話。いま、大宮「そごう」デパ地下に「ぶらじる」が出張出店し、週に何度か、竹内くんも出勤している。前店がソフトクリームを売っていたので、そのまま引き継いで、神保町店にはないソフトクリームを販売している。「ソフトクリームなんて、原価安くて、ぼろ儲けじゃない」と失礼なことをぼくが言うと、決してそうではなく、北海道の特別な牛乳を使用しているので、儲けは少ないという。それに……と、つけ加えて竹内くんが言うには、ソフトクリームの器械って、定期的に洗浄と消毒が必要で、それがすべての部品をいったんとりはずしての作業になり、非常に手間がかかるのだという。それがメンドウで、ソフトクリームを扱わない店があるというぐらいだそうだ。知らない話を聞くと、目の前が開けるようだ。

昨日は吉祥寺で世田谷ピンポンズさんのライブ。盛況で、いいライブだった。しかも、落ちついたいいお客さんがいっぱいついている。知合いがたくさんいて、終演後、誘って10名ほどで居酒屋で一時間強飲む。途中、路上で自転車をこぐ土井「トムズ」さんとばったり。土井さんが西荻で絵本の古本屋を開く、という話をしていたところなので驚いた。夏葉社島田くんともたっぷり喋る。
高橋「白い扉」秀幸さんも来ていて喋ったのだが、「白い扉」へ通っている時、高橋邸の居間の大机で作業をしていたら、たちまち、ぼくの周りがモノであふれ、散らかってしまう。高橋さんがあきれて笑い、「岡崎さん、散らかしますねえ」と言う。「その方が落ちつくんでしょう」と言われ、「そうなんだよ」と答えた。ぼくが帰った後、いつも散らかったのを、高橋さんが手際良く、片付けてくれているのだった。テレビや新聞雑誌で、「発達障害」の文字を眼にすること多くなって、その症状のいくつもが自分にあてはまることに気づく。ものが片付けられない、忘れものをよくする、衝動的に余計なことを言うなどはその一例。いや、ほかにいくつもあった。「発達障害」だと認めてしまうと、だからどうだと言えないが、腹に据えて、残りの人生、そのことを自覚して生きて行こうと思うのだった。

太ももの筋肉痛で音を上げる。昨日、石黒・海ネコ登山隊の御誘いを受け、ほか二名とともに、景信山登山。いつも高尾山つながりの小仏ほかを登っていたが、これは初体験。眼を疑うようなバスの長蛇の列を高尾駅前で体験し、小仏へ。いつも小仏城山から降りてくる道を上って、途中、登山道へ切れ込んで行く。石黒隊長は御年80ウン歳というのに、歴戦の強者で、健脚。隊のなかで、どうみても一番ポンコツの私を気づかって下さり、休み休み登ったが、みんなにも迷惑をかけてしまう。しかし、紅葉の深まる秋の山は気持ちよかった。山頂から富士山もきれいに見えた。ここまでは何とかついて行ったが、次のピークの堂所山、明王峠から相模湖までの下りが続く、長いルートに、完全に削られてしまった。約5時間、歩数は2万歩を超え、途中、足元がかなり危なかった。グラリとくれば、真っ逆さま。ほかの隊員は、みんな平気な顔でサクサク下りて行ったが、私はドテドテのヨタヨタ。しかし、身体の中の悪い成分が、汗で出尽くしたようであった。
高尾で打上げというみなさんと別れ、荻窪「六次元」へ。二年ぶりとなる、貸切りの「新阿佐ヶ谷会」である。青柳いづみこ川本三郎両顧問ほか、フランス文学からラテン・アメリカ文学まで、大学で教える著名外国文学者、その担当編集者たちが顔を揃える。高級な雑談で、ワイン、ビールが次々と空いて行く。ここでも(こんな場にこんな私がいていいのか)ポンコツの我だが、じつに楽しかった。貴重な話がたくさん出来た。山と文学のダブルヘッダー
「六次元」へ行く前、ガタガタになった足を休めに、荻窪の銭湯「藤乃湯」へ。ジェットバスで、身体をほぐす。休憩室で、大相撲千秋楽の、高安が土俵で転がるところまで牛乳を飲みながら見る(藤乃湯はビールを置いてない)。高景勝の優勝が決まった瞬間であった。ほかのお客さんとワイワイ言いながら銭湯で大相撲。これ、いいもんだなあ。ビールがあるとなおよかった。
次のサンデー用の本を、ポンコツにむち打って、ガシガシ読んでいる。

来年早々、「中川フォーク・ジャンボリー」が決定しました。朴保さんをゲストにお迎えします。詳細は、国立ビブリオ店主のブログを御覧下さい。さっそく、予約が入り始めているようです。http://d.hatena.ne.jp/banka-an/20181123

『花嫁と仮髪―大阪圭吉単行本未収録作品集 1 ―』が書肆盛林堂から発売されています。店主小野くんが執念を燃やしている、大阪圭吉のコレクションの一端が集まった。一種のモダン小説としても読めそうです。エッセイもあり。充実した内容になっております。カバーイラストもいいですね。部数が少ないので、あっというまに在庫切れになると思われます。ご注文は盛林堂サイトまで。東京古書会館2Fの情報コーナーでは11月30日から「喜国雅彦の個展」が始まる。そうか、喜国さんも今年還暦か。花の1958年古本者たちが、いっせいに今年、還暦を迎える。