ニュー日月堂訪問

okatake2009-12-10

連日、現実を逃避して東京をさまよったから、9日はいちにち仕事。月二回の気が張るヘビィな原稿を早起きして上げ、夕方から眠る。深夜から「ブックジャパン」は古井由吉『人生の色気』新潮社、「サンデー毎日」は『ルイス・バラガンの家』新潮社を書評。あれ、どっちも新潮社だ。
「サン毎」は、村田喜代子『偏愛ムラタ美術館』平凡社を書評するつもりで読み始めていたが、レギュラーの池内紀さんが取り上げたい、という申し出があったそうで、担当者からそう言われて、「それじゃあ、池内さんに書いてもらったほうがいい」と、ぼくは引き下がった。
10日は御茶ノ水の教育系出版社に出向く。この出版社の編集長がもっている某大学の講座で、少人数の学生相手に話をすることになり、その打ち合わせを兼ねて昼食。こじんまりとした和食店で2500円の弁当をごちそうになった。
御茶ノ水から乃木坂へ。青山墓地を散策したあと、同じフロアで店舗移動した「日月堂」を訪ねる。ほんとうに根津美術館が目の前だ。フロアが広くなり、全体にゆったりしている。棚も増えた。建築関係の珍しい本がずいぶん増えたという印象。赤い色で統一、は前の店舗を踏襲している。佐藤さんとひさしぶりにいろいろ話す。大岡山の店から始まって、干支がひとまわりしました、なんて古風なことを言う。12年がたった、ということだ。ほう、もうそんなになるか。日月堂のお客さんでも、大岡山の店を知っている人はそんなにいないんじゃないかな。あのころ、佐藤さん、いまと比べたらもう少しふっくらしていたんじゃないかな。苦闘のあとが見える。しかし、思う存分、という日月堂カラーは、店舗が広くなって、より強くなった印象。挨拶しなかったが、店員さんなのか、若い男性がずっと作業をしていた。
何か買って帰ろうと思ったが、本はなかなか。引き出しのなかに、黒い漆塗りのペン皿(東京勧業博覧会のノベルティ)が1500円であって、これをもらう、というと「さしあげます」と言う。それではあんまり悪いから、絵はがき500円というのを買わせてもらう。
新宿三丁目に移動。バルト9で、「スペイン映画祭」へ知人に招待され、「悲しみのミルク」「泥棒と踊り子」の2本を観る。まったく違うタイプの2本で、それぞれ面白く観た。後者はエンドロールにチャーリー・ヘイデンが流れて、いいなあ、と思う。若い水兵が女の子を荷キスをするジャケットの名盤「QUARTET WEST」の2曲目、「THE LEFT HAND OF GOD」であることを帰宅してから確認。すぐにまた聴いた。解説によると、これはヴィクター・ヤングの甘いバラード。この一曲だけで、生きる支えになる。それぐらいいい曲、名演。
本を買わない一日だった。