西脇順三郎詩集』新潮文庫、はまったく素晴らしい。いちいち、詩行の意味を追っていたら、けっこう難解なのだが、飛ばして読むと、イマジネーションの奔流に巻き込まれ、快感がある。どうして、こんなトリップした言葉の連なりが思い付くのだろう。歌仙の要領か。村野四郎解説では「『予期しない結合』あるいは新しいアナロジイ(類推)の発見のためにくわだてられた言語の構築物」とする。ほんと、その通りだ。西脇さんの墓は故郷の小千谷とは別に、増上寺にあるらしい。こんど、行ってみよう。川崎市高津区影向寺には詩碑がある。「雲の人に映る頃/影向寺の坂をのぼる/薬師の巻毛を数える秋」。いかにも西脇、だが、お寺の住職や関係者も面喰らったろう。「どういう意味でしょう?」「さあ、深い意味があるんじゃないでしょうか」「影向寺が出てくるだけありがたいと思わなきゃ」。今度、行ってみようと検索したら、最寄り駅は南武線武蔵新城」であったが、そこから遙か離れている。新潮文庫版の最後の短い詩「宝石の眠り」を引く。これを西脇さんが手書きした色紙が欲しいなあ。西脇さんがスケッチした洲之内徹の肖像があるが、これもいい。
「永遠の/果てしない野に/夢みる/睡蓮よ/現在に/めざめるな/宝石の限りない/眠りのように」