このところ、枕元において、ちびちび再読している新潮文庫版『西脇順三郎詩集』をカバンに入れて、昨日は、国立駅から谷保、はけの道、古民家、郷土美術館と巡り、矢川駅から電車で帰ってきた。西脇の詩は、秋に、野の道によく似合うのだ。谷保天神では、境内で何匹か鶏を見た。放し飼いをしているのだ。ときどき、コケコッコーおよびトッテコウカアと鳴いた。風が強い晩秋だ。訪れる人の少ない本殿で手を合わせ、一万歩の歩きを続ける。黄色い帽子をかぶった小学生とその友だちが、用水路の脇で、地べたにしゃがんで何かひそひそと話している。水音が高くなる赤い橋を渡る。目の前に森が見える。一人であることが気持ちいい。人といると、おしゃべりすぎるのだ。それで、少し自分がキライになるのだった。
「小平村を横ぎる街道/白く真すぐにたんたんと走つている/天気のよい日ただひとり/洋服に下駄をはいて黒いこうもりを/もつた印度の人が歩いている/路ばたの一軒家で時々/バットを買つている」)「旅人かえらず 二一」。この「街道」とは、五日市街道であろうか。西脇の詩には武蔵野、多摩の地名がよく出てくる。
改版、カバー変えに初めて気づいた、新潮文庫村上春樹螢・納屋を焼く・その他の短編』を買う。同じく安西水丸のイラストが使われているが、また別の新しいイラスト。なんと大胆な、あっさりしたイラスト。「ノルウェイの森」の原型となった「螢」に、先日、歩いた目白台にある和敬塾が出てくる。なるべく、新潮文庫という言葉を多くアップして、応援したい気持ちが募る。