連日、古本屋の夢。路上にまで商品がせり出した八百屋の一角で、古本が売られているという。たしかに隅っこに戸板のような台が出され、無造作に本が積みあげられ、すでに猛者が張り付いて物色している。見ると、フランスの商品カタログや古い雑誌類、文芸書などいいところだ。値付けは50円100円の投げ売りらしく、わさわさ、みんな抱え込んである。本の下敷きになった、底近くに結束した五冊ぐらいの単行本があり、見たこともない野呂邦暢の『やさしき我らが女たち』というタイトルの背が見えている。ドキドキする。こんな本あったのか。抜き出すと四六判変型のハードカバー。タイトルと著者名だけのシンプルなカバーがかかっている。おずおずと店番をしている人(あれ、知合いだ。しかも古本に興味ない人。しめた、と思う)に手渡すと、「ああ、これ、ネットで9万2000円ぐらいついてる本だから、7万円ですね」と言う。いや、それはないだろう。ほかは50円100円なのに。しかも、古本のこと、くわしくないでしょう、あなたと思ったところで眼が覚めた。なんだか悔しい。
休みを利用して、善行堂から依頼された一箱と、jpic講座で恒例の一人一箱古本市のため一箱、段ボールに本を詰める。リビングの本棚と本棚の前に積み上げられ、ネコしか通れない惨状を崩し、どんどん値をつけていく。これでリビングが少し片付いた。おかげで、いろんな資料や本を発掘。そうか、ここにあったかなどなど。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。地下の大魔窟を切り崩し、「素描展」での古本コーナー用の本も作りたい。どんどん執着がなくなっている。いいことだ。1975年の日本全国のジャズ喫茶が紹介された『ジャズ日本列島』が見つかる。これ、探していたんだ。村上春樹がジャズ喫茶オーナーとしてアンケートに答えている。めちゃくちゃ生意気なコメント。