夏葉社から『山の上の家』という庄野潤三作家案内ともいうべき素敵な本が出た。http://natsuhasha.com/news/yamanouenoie/なんともいい仕上がり。これをカバンに入れて持ち歩くだけで、少し空気が涼しくなる。島田潤一郎さん、渾身の仕事である。私も「庄野潤三とその周辺」という一文を寄せている。『夕べの雲』などでおなじみ、庄野さんの生田の「山の上の家」が、昨年逝去された千尋子夫人の手で守り続けられ、このたび、年に2度、一般公開されることになった(予約制)。そのことを契機に今回の本が作られた。お祝いとして、本日、島田さん、執筆者である私、北條一浩さん、上坪裕介さん、そして沖縄から上京してきた「ウララ」の宇田智子さん、ほか、応援団ともいうべき旧知の女性たちを加えて、庄野家にご招待されたのである。書き出すと、あふれそうに長くなるので、ここに事実だけ書き記しておく。いい一日だった。庄野さんが書く小説のような(いろいろ話をうかがいながら、何度もそう思った)時間であった。今度の本には、秘蔵の家族写真ほか、庄野家のアルバムともいうべき、写真がたくさん収録されているが、一枚、ドキッとして目が止まったのは『ガンビア滞在記』で、庄野夫妻の重要な友達(ともに他国からのエトランゼ)として登場する「ミノー」の写真が掲載されていることであった。『ガンボア滞在記』は、写真が一枚も使われていないため、風景や人物を想像するしかなかったが、「ミノー」もそうで、ああ、こういう男性だったか、とここで初めて知ったのであった。いかん、長くなりそうなので、ここで切ります。「ウララ」宇田さんに会えたのもよかった(初対面)。こちらは、思った通りの実質の伴った、真直ぐな女性であった。背が高いのは意外、であったが。庄野作品でおなじみの、夏子さん、龍也さんに喜んでもらえたのが何よりであった。このお二人と接していると、自分までが、庄野作品の一部になったような気がするのだ。