日本映画専門チャンネル山田太一「秋の一族」(1994)全3回を、分けて見る。無理めの設定は、山田らしい。それでもちょっと無理があるか。それをドラマ作りの巧さと役者の力量で乗り切るのだ。緒形拳岸恵子藤岡琢也の演技合戦が見もの。両親を早く失った妊婦役の原田知世の可憐もつけ加えておきたい。大鶴義丹と原田が住むアパートは、京王線沿線か。電柱に「四谷」の町名が。多摩川も近い、となると「中河原」駅近くではないか。会社を辞めた緒形が働く「府中郷土の森」公園も、わりあい近い。
TBSチャンネルで、「ありがとう」の後番組だった石坂浩二長山藍子主演「ゆびきり」(1973年)が始まった。見ていた覚えがある。総菜と調理パンを売る下町の小さな店をきりもりする「かあちゃん」と、結婚のため大学(薬科大学)を中退した「パパさん」、そして5人の子どもたち(高野「バロム1」智幸!)の仲睦まじい生活を微笑ましく描く。第一回視聴率は50%近かった。す、すごい。当時、イカフライとメンチが30円、コロッケが20円。おそらく3・5倍換算で、現在の物価になると思われる。店舗部分の奥のひと部屋が住居で、三段ベッド二つに子どもたちが寝る。寝て、個室にもなっている。風呂はなく、銭湯へ通っている。親子7人(うち子ども5人)が、毎日銭湯へ行くと、今なら大変な金額になるが、約50年前は今より物価水準からいって銭湯代も安かった。
木下恵介「人間の歌シリーズ」のなかの一本、近藤正臣・香川美子主演の「旅への誘い」(1975)は、放送当時見ただけだが、もう一度見てみたい。全13回のうち山田太一も脚本を書いている。受験一辺倒の教育行政に反発し、もっと人間らしい教育が必要と、中学教師の近藤とその妻・香川が(自宅で、だったか)学習塾を始める。しかし前途は多難で、とくに近藤の聴力がだんだん失われていく。二谷英明、徳永れい子、奈良岡朋子小野寺昭(「二人の世界」にもちょい役で出ていた)などが出演。