昨日は外出。ひさびさの「ギンレイ」で「美女と野獣」(そういう話だったのか)、散歩堂さんに席を譲ってもらって国立演芸場「TBS落語研究会」。有楽町線で「永田町」から歩く。前から2列目のいい席。鉄道ネタを売りにする古今亭駒次は新作「鉄道戦国絵巻」(客席はよくウケていたが、まあ一回聞けばいいかな)、三笑亭夢丸「三下り半」、三代目を継いだKKN(とくに名を秘す)「菜刀息子」、仲入り後に師走らしいネタ、春風亭一之輔「尻餅」、柳亭市馬「御慶」(志ん朝の好演が印象にある)。
某をアルファベットで(とくに名を秘す)としたのは、感心できなかったからである。まずセリフの語尾が徹底して聞き取りにくい。しかも大声を張り上げての一本調子。え、これで真打ち? 「ながたんむすこ」は上方ネタで、もともと大して面白くない噺ではあるが、それを徹底して面白くなくさせている。どういうわけだろう。客席は2度、さざ波という感じで微かにクスリと来たが(ここで少し笑っておかないと笑うところがないぞという)、あとはお通夜のようであった。前の方、寝ている人も複数いた。信じられないものを見た、という感じであった。これがぼく個人だけの感想ではない、とわかったのは、仲入りの際、ロビーで老夫婦の妻が落語通の夫に「あれ、いったい何だったの?」と話しかけていた。落語を聞いて「あれ、何だったの?」もなにもないものだが、そういうことだ。「喋ってることが、ほとんどわからなかったわ」「うーん、人物が描けてなかったかな」と会話していたからだ。ぼくよりはるかに落語界に詳しい散歩堂さん、金丸姐さんの意見を聞きたい。
その沈滞を打ち破って、眉を八の字にして、シニカルにサンタの枕を振った才気あふれる一之輔、徹底して明るく調子がいい市馬と、まあ、この二席でじゅうぶん満足の会だった。年の暮れに、年の暮れから正月を題材にした落語を聞くというのは、格別のいい気分である。いい年の瀬だ。