冬である。昨日は午後、筑摩書房へ行き、12月8日発売のちくま文庫新刊『古本で見る昭和の生活』の見本が出来、書店からの注文で、50冊にサイン、落款、そして昭和30年代のマンガ、アニメのキャラクターを30種ほど用意し、イラストを描き入れていく。この作業に30分かからなかった。描けば描くほど、イラストの線が滑らかに、早くなっていく。装幀は倉地亜紀子さん。解説の出久根達郎さんのありがたい文章に泣けた。カバー写真は昭和31年福岡、半ズボン、上は裸の少年が、書店の店頭で熱心に少年雑誌を立ち読みしている図。いい写真(北島寛さん撮影)。ほか、店頭は本を立ち読みする客でスズナリだ。
これで、ちくま文庫に8冊目となるぼくの本が入った。まだ流通しているのは、この新刊以外は『昭和三十年代の匂い』『あなたより貧乏な人』『女子の古本屋』の三冊。あとの古本関係の書目はいずれも品切れ。
本書は単行本のとき地味な本だったので、こうして改めて文庫になるのはうれしい。サラリーマン、宴会の隠し芸、大人の消滅、はとバス、アパート生活、歌謡曲から見る「東京」、女性ドライバー、花粉症、帽子の時代、狐に化かされるなど、盛りだくさんの内容。こうして読み返すと、よくがんばって書いたなあと思う。
御蔵前書房を店頭から拝み、飯田橋へ。芸術新聞社社長相澤さん、頼りになる先輩坂崎さんと「ビター」で飲み会。いろいろためになる話が出てきた。出版の話が中心。坂崎さん、本の整理を始めていて、たとえば唐十郎が好き、っていう人がいると、じゃああげますと、唐十郎コレクションをドンと送ってあげるそうだ。「ここに、あれがあるといいんだがなあ」と、コレクションの穴をわざわざ買って埋めて、そのうえで送るそうだ。なかなかできることじゃありませんよ。
二次会は小雨のなか、小じゃれたカラオケ店で、「どうして岡崎さんが一緒だと、こうなるかなあ」などとボヤかれながら一時間ほど熱唱。新刊の見本をお二人にさしあげ、残ったのをカバンに入れて帰ったが、なんだかカバンが温かい気がした。