昨日は「雲のうえ」デザイナーの有山氏の事務所で、牧野さん、ほか別チームのライター&カメラマンと顔を揃え、「雲のうえ」取材の最終打ち合わせ。14〜17日というスケジュールになった。そうか、一人で飛行機に乗るのか。ちょいと心細いです。また、何か失敗をやらかさねばいいが。有山さん、旧「くうねる」始め、各種演劇ポスター、座高円寺など、幅広く第一線で活躍されているデザイナー。装幀も多数で、事務所に並んでいる本を見て、ああこれもそうか、あれもそうかと思う。牧野さんも東奔西走、超多忙で、バリバリ、生き生きと仕事をしている人とご一緒すると、励みになる。それに引き換えぼくは……というのは、少し措いておこう。
三泊四日の食事、すべて牧野さんにおまかせ。牧野さん、食べることをすごく大事に生きている。その方面の取材も多い。ぼくはけっこう冷凍のチャーハンがうまいと思っていて、皿に入れて電子レンジでチンし、フライパンに溶き卵を流し入れ、そこに解凍した冷凍チャーハンを投げ込み、少し熱を通し、水分を飛ばすと美味い、と動作を入れて力説したが、牧野さんを説得することはできなかった。「ごはんを使って作れば50円かかりませんよ」と言うのだ。それに牧野さんは、そもそも電子レンジを持っていない。必要ない、というのだ。ううむ、ぼくみたいに、なんでもチンする男とは根本が違う。
打ち合わせ終わり、牧野さんと歩いて神田、上野へ移動。ラッシュのような雑踏の上野公園をつっきって、池之端のマンションにあるギャラリーを訪ね「一条美由紀展」を見る。牧野さんの友人。この物置のような小さなギャラリーを運営するのが、併設する美術古書店「store front」。長らくニューヨークにおられ、美術界で仕事をされる方が運営。挨拶して、古書組合に加入されているというので、少し話をする。いくら古ツアさんでも、ここを踏破するのは難しかろう。どうでしょうか。平日、ちゃんと開けて、ウェルカムで客を受け入れておられるとのことで、詩集や評論集など、ふつうに買える本もあります。
このあと御徒町へ流れ、「岩木屋」そして老舗バーで飲む。後者の老舗バーを、あとで二人で来て客が「満席です、もうしわけありません」と断られていたが、振り返ると、特に名を秘す、なんと知っている人であった。酔いをさますため、このあとも牧野さんと御徒町から上野を徘徊。キラキラネオン輝く大都会を見る。ぼくが住む西郊の街とは違うなあ。
松家仁之『光の犬』を読み始めるが、あんまりいいので、良すぎるので、評価が先走らないよう、手綱を締める。落ち着け、落ち着け。しかし「そうとも、これが人生だ」と言いたくなる。