静かな秋の連休の中日である。とくにどこへも出かけない。泥のなかでのたうつドジョウのように、あくびしながら沈潜している。とりあえず、毎週「サンデー」用の読書が待ち受けていて、ジェフリー・ディーヴァーリンカーン・ライムシリーズ邦訳の新作『スティール・キス』を多少フライング気味でどんどん読む。相変わらずの目まぐるしい展開に、多少飽きてきたかもしれない。ロバート・B・パーカーやジェームズ・リー・バークにある、詩情豊かな描写や、洒落たセリフがないからかもしれない。早くに亡くなった小泉喜美子は、関川夏央に、日本の小説はお洒落なところがないからダメ、というようなことを言ったようだ。そうだなあ、と思う。まったくないわけではないが、そういう工夫に乏しいと言えるかもしれない。逆にお洒落な海外のミステリなどを続けて読むと、小山清上林暁といった、無骨な、しかししんみりした小説を読みたくなる。うまく補完しているのだ。小泉も、たまには日本の私小説を読めばよかったのに、と少し思った。