どこかで、けやき書店さんの談話が掲載されていたが、いま井伏鱒二尾崎一雄は安く、吉村昭が、死んでから値が上がっているそうだ。へえ、と思う。井伏と尾崎が(初期作品は別に)いまや均一(「ささま」や「盛林堂」)で売られていることは知っているが、吉村昭はなぜだろう。
台風一過で晴れて、風がゴウゴウと鳴る秋の公園をさんぽしていたら、スコップを手にした小学校高学年ぐらいの男子二人が、築山の斜面の土を掘り返している。横穴を掘るつもりか。土が必要なのか。珍しい光景を見た。一度も買ったことがない、タイヤキとテイクアウト専門の太巻き、いなり寿司の店があって、きつね色のいなり寿司が目に止まり、三個注文する。一個65円と安い。店には男性が一人いて、ちゃんと見たのは初めてだが、膨らんだ風船みたいに太っている。売残りを自分の胃袋で処理しているからか。動くのもしんどそうだ。しかし愛想はいい。問題ない。この日は、ハービー・ハンコックのCDと、片岡義男『ターザンが教えてくれた』ほかと、いなり寿司と、ジーパンとネルのチェックのシャツを買った。買い物は楽しい。財布は淋しい。