昭和28年、大学を休学した井上ひさしは、岩手県釜石の国立岩手療養所に職員として入る。患者の大部分は結核で、入院費は一割自己負担であった。それを徴収するのが井上の役目であったが、所長は、みなお金に困っているんだから金は取るな、と言った。「ほんとうはそれくらい国で出していいんだ」という考えであった。こういう立派な人がいたんだ。金の事は心配するなという所長の手紙を、入院患者たちの家に井上が配達する。その家が、柳田国男遠野物語』に登場する地図の中にあった。井上は柳田に目覚める。いい話だ。『座談会 昭和文学史(二)』の中で語られている。
昨日、ヨコハマの神奈川近代文学館山本周五郎展を見に行く(仕事)つもりで家を出たが、サン毎の原稿書きが遅れ、駅に着いたのが昼近い。夕方にサン毎へ本選びに行くことになっていて、バタバタするなあ、というのと、三角の動きがメンドウになってカナキンはパス。「ささま」など立ち寄りながら神保町へ。古書会館二階スペースで開かれている古ツア展を見る。ツアーで使っているメモ帳など、よく全部残してあったなあ、と感心する。そのほか、ツアーがブログ化する過程が、いろいろな資料でわかる。戦利品の一部も展示されているが、圧巻は野呂邦暢の文庫コンプリートであろう。一冊いっさつ、日本全国で買い集めたもので、元手がかかっている。
山周文庫を均一で二冊拾い、「ぶらじる」でまったり。そういえば、山周原作の「ひとごろし」が植木等主演で東芝日曜劇場で放送されたのが、TBSチャンネルでやっていて、録画して見た。映画では松田優作が主演。弱虫、臆病ものでも、剣豪を倒せるという話。