うららかな快晴、初夏の空気である。午前、中央公論新社が入った読売新聞社を訪ねる。中公が読売の傘下に入り、京橋から大手町へ移ってきてから初の訪問。ビルは要塞のように警備が堅固で、中公のフロアへ侵入するのに、いくつか関門がある。ぼくが隔週で訪ねる毎日新聞出版も、セキュリティがあり、ひと手間あるが、読売のビルはさらに敷居が高い。そのことを詫びながら、文庫担当のFくんが現れ、『古本道入門』30冊にサイン、落款、イラスト(ネコのシリーズ)を入れる。営業担当、別の編集の方と挨拶。Oさんは、吉田健一『酒談義』を作った人で、中上健次のジャズエッセイ集ほか、中公文庫でぼくの好みの本を作る人。同文庫の新刊、杉森久英『滝田樗陰』をいただく。これは中公新書の初期に出ていたが、その後、絶版となり入手困難になっていた一冊なり。それに増補を加え、文庫としての体裁をととのえたもの。そうか、『木佐木日記』の日記原本が出た、その流れかと思う。
サインは30分で終り、Fくんに要塞ビルを案内されながら、最上階のレストランへ。皇居を見下ろし、ビルの間から東京タワーの見える絶景の展望。雑談しながら一緒に食事(ハンバーグランチ、美味かった)。このあと、飯田橋へ移動、時間調整して「ギンレイ」で「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」を見始めるも、80年代の大学野球チームの酒、女、四文字が飛び交う放埒な内容に、途中からうんざりしてきて30分で出る。こういうことも珍しいのなり。楽しくないわけではないが、その楽しさが抱える内訳が、どうも、今の気分では受け止めかねる。
西荻へ移動、「音羽館」「盛林堂」を巡り、5月6日の会の打ち合わせ。すでに予約が30に迫る勢いで、このまま増えると、予定していたビリヤード山崎から、こけし屋に会場が変更になるかもしれないと広瀬くん。記念に会場で配布される小冊子は、盛林堂が担当してくれる。ぼくの感謝の辞に始まり、なるべく多くの人からコメントをもらい、それを掲載、最後に『風来坊ふたたび』補遺の一篇を加え、16パージ程度の小冊子になる予定。出来上がるのが楽しみ。どちらの店でも、夏葉社島田くんに会う。山高登さんの本を営業中。ちょっと見せてもらったが、版画を彫るために、山高さんが撮影していたモノクロ東京風景がどれもいい。ライカで撮ったらしいが、焦点距離が深く、空気感まで写し出したようだ。
電車内では、飯田橋「ブ」で買った景山民夫『LIFE IS A CARNIVAL 極楽なんでも相談室』(新潮文庫)を読む。あんまり見ない一冊なり。カバーを見て、おお! 森英二郎さんだと気づき買ったが、森さんが手がけた挿絵もふんだんに入っている。解説が「桂ざこば」というのもいい。諸事、無事こなしつつ、5月に突入したい。すべてにおいて、少々疲れ気味で、夕食を摂ると、すぐ眠くなる。