アカハタ「試写室」で、藤沢周平原作ドラマ「三屋清左衛門残日録」の原稿を書き、ドラマ自体、たいへん感心して見た。テレビ時代劇の水準を上げる出来映え。主演は北大路欣也。そこで原作を読んでいるのだが、家督を長男に譲り隠居生活をする三屋は、老いの淋しさを感じ始め、同居する息子とその嫁にも気兼ねをして暮らす(じつに現代的なテーマ)。これが52歳という設定。なんとな! 北大路はこれを72か73歳で演じたが、ちょうどいい。今だと60代だとこの境涯は少し早く、やはり70代の抱く心境であろう。いま52前後の男優を調べたら、堤真一阿部寛鶴見辰吾などがそうだが、まだ若い。息子の留守中、息子の妻と二人っきりだと、危ない感じだ。1990年代NHKで、やはり同作をドラマ化した時、主演は仲代達矢で、まだ60を超したところだった。この20数年でも、老いの年齢差がある。『三屋』は、藤沢作品でも、「ブ」108円ではあまり見つからない。ドラマを見て、求める人が多かったからではないか。文春文庫。風呂で読むのに最適である。一つの作品が30ページ強。ぼくも叶うなら、さっさと隠居したい。そうしたら、釣りや碁を始めるかもしれない。頭の毛は短く刈って、脂っこいものを食べるのはやめる。もう息もあんまり吸わない。