伊豆半島の年の暮れだ。日が入って風物総てが青味を帯びて見られる頃だった」。志賀直哉「真鶴」より。そんな一節を思い出す、晴天の年の暮れである。
昨夜は原書房・百町邸で西荻古本者忘年会。これは昨年に引き続く、古本臭がプンプン漂う同じメンバー、ぼく、古ツア、盛林堂夫妻、百町夫妻による。百町ジュニアが新しく加わったが、もちろん酒を呑むわけではない。どこでそういう話になったか、最初に見た映画は、というところからアニメの話になり、ぼくのスイッチが入ってしまった。「わんわん忠臣蔵」を連呼した記憶があるが。今年の歳末は、落語で文菊「芝浜」、オペラシティでウクライナ饗の「第九」、水前寺邸でもちつきと、いかにもな締めくくりとなった。
小林信彦『地獄の読書録』(ちくま文庫)を、つらつら、パラパラと再読していると、エド・マクの『大いなる手がかり』の訳文と注を批判している。「日本語の下手なのには、なんとか眼をつむるとして、この訳文中のおびただしい〈訳注〉にはおそれ入った」と手厳しい。ぼくも、いろんなことをよく誤記するので、読んでいて胃が痛くなる。訳者が誰か、武士の情けで書かれていないが、ポケミスがそのまま同じ訳者でハヤカワ文庫に入っているとしたら、加島祥造だ。文庫版ではどうなっているか、今度チェックしてみよう。1960年代初頭、文庫が100円、ポケミスが150~200円くらい。単行本が300円という感じか。公務員初任給が1万4000円の時代。
来年初仕事となる、著者インタビュー用に鮫肌文殊らぶれたあ オレと中島らもの6945日』講談社を読み始める。