寒い朝、6時に眼ざめ、リビングのストーブに火を入れる。ちび猫2匹がエサを求めて飛びかかって来る。
昨日、昼飯をたべていたら、ケータイに着信。国分寺ブラザーズの牧野さんから。なにごとならんと出てみたら、この日、2時から初台オペラシティで「第九」のS席チケット2枚取ったのだが、急用で行けなくなったので、代わりにどうですかと言われる。思いがけない事態。「はいはい」と返事して、自転車をかっ飛ばし、牧野邸へ。チケットのほか、日本酒の小瓶、落花生、紙コップの入った袋を渡され「あのへん、飲み食いできる場所がないんですよ」と言われる。重ね重ねの気づかいに感謝し、家まで戻り仕度して、急いで初台へ。この間2時間弱。少し前まで、まったくそんなことが起きると思っていなかった年の瀬に、ウクライナ饗の「第九」をオーケストラを上から見下ろすスペシャルな2階席で聞く。的確、明解な指揮で、つややかな力強い「第九」を堪能する。何年ぶりであろうか。
http://www.koransha.com/orch_chamber/daiku_ukraine_orch2016/
二階席は段差のある二列で、入口近くの隣り席がずっと一つ空いていたが、開演まぎわにさっと入って座った男性は2mはある巨人。折り畳んだ足の膝が、ぼくの膝よりはるか高い。長い脚を窮屈に折り畳んで、席の外側へ送り出して聴いている。おそらく、巨人のために、席はいつも端っこを取り、ほかの席の迷惑にならぬよう(もしも途中席なら、いちいち立たないと、ほかの人は通れない)気を遣って、ようやく席につくのだ。ぼくも180近くあるのだが、そんな不便は感じたことがない。
牧野さんのおかげで、ぜいたくな年の瀬を夫婦で楽しんだ。感謝、感謝である。帰りは混雑する新宿駅を忌避して、明大前から井の頭線。毎年のことながら、サントリー「ウィスキー・ヴォイス」から2017年カレンダーを頂戴する。これは人にあげても喜ばれる洒落たデザインのカレンダーで、来年分は自分でちゃんと使おうと思う。「潮」2月号(2017年)に執筆した工藤律子『マラス』書評が掲載されております。