okatake2016-12-25

おおクリスマス、ですか。招待券プレゼントの応募ハガキをせっせと書き、ようやく当った一枚で、本日午前10時スタートのなかの芸能小劇場「文菊の芝浜」を聴きにいく。受付で整理番号つきチケットと引き換える。文菊は初めて。予備知識もなく聞いたが、いやあ驚きました。ひとことで言えば「うまい」となるだろうが、落語国への没入、そのテクニックについて大いに感心する。まず、高座に上がった時の姿勢、なりかたちがよく、口跡が非常にきれい。前座のたま平のあと、「強情灸」中入り後、待ってましたと「芝浜」を。45分ぐらいかけての高座だったが、場面展開や組立てがうまく、最後の大晦日のシーンに時間を割いて、夫婦愛の描写をたっぷりやった。とくにおかみさんの描写に、なんともいえない情愛があり、会場のあちこちで涙を拭く姿が見られた。「よそう、夢になるといけねえ」というオチまで、一気呵成に筋を運んで、まことに見事なできばえ。才気がうるさく感じられず、芸に融け込んでいる点もよかった。もらった資料によれば、文菊は1979年東京生まれで、あの圓菊の弟子。前座名「菊六」から二つ目、入門11年目で真打ち。NHK新人演芸大賞ほか、各賞を受賞しているが、まあ当然だろう。落語通の散歩堂さんにいわせれば「岡崎さん、気づくのが遅いがな。いまごろ、何言うてまんねん」となるところだろうが、知らないでぶつかった大器だけに印象が深かった。
すっかりいい気分になり、隣りの高円寺まで歩く事にする。高円寺南五丁目に住んでいる頃は、よく中野まで歩いたものだ。中央線沿い、線路際南側を西へ、途中跨線橋をわたり、北側を。座・高円寺で開いている古本市(最終日)を覗く。豆ちゃんが帳場にいたので挨拶。けっきょく何も買えなかったが、女子もの、紙ものを見るのは楽しかった。高円寺駅前「文禄堂」へ入ると、入口すぐの壁、新刊陳列台に『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』が面陳されていた。少なくとも一冊は売れている感じ。ありがとうございます。
帰り、「ささま」へ寄り、藤田嗣治『巴里の横顔』裸本を315円と、店内で一冊買う。すべて描き文字、描き絵による装幀が、なんとも好ましい。帰り、国立「ド」で、タバコを吸いながら、しばらく昭和4年の、この本を読むと、ぜいたくな読書空間ができあがる。本自体、軽く、持つと手にしっくりなじむのだ。