okatake2016-11-27

唐澤平吉・南陀楼綾繁林哲夫編『花森安治装釘集成』みずのわ出版、をいただき、すぐ手に取りながら、これは簡単には紹介できない気がしていた。ここに、編者三人がこつこつと自力で集められる限り集めた花森装釘本が、カラー図版で総ざらえされている。目に楽しい一冊で、花森の美意識が、独自のものであったことがわかる。それをはっきりビジュアルで見せるため、ジャケット、本体、扉、あるいは奥付など一冊をいろんな角度から示し、一冊が、独自の規範で統一されていたと知るのだ。ジャケットをめくり本体まで見る人は、古本好き以外は、じつは少なく、当今では無地もしくは、ジャケットの一部を単色であしらう簡素なタイプのものが多い気がする。コートの下におしゃれしても、見る人はいない。しかし、隠されたところにも美はあり、全体を彩る。花森装釘はそうだった。ぼくが所持している本もけっこうあるが、ここに掲げられた十分の一、あるいはもっと少ないか。あ、これは欲しいな、と思ったのは田辺聖子『女の食卓』(講談社)で、ジャケット、本体、扉が同じ女性の絵でありながら、スケッチ、線入れ、着色と三種あり、文字のあしらい方も三種と凝っている。ぜひ手に入れて、実物を眺めたい。
定価8640円。注文はみずのわ出版まで。京都・善行堂では手に取って確かめて、買える。
エルスケン『ニッポンだった』リブロポートは前から欲しかった写真集で、こないだ覗いた和洋会で1000円だったので買った。電車のなかでも、ずっと眺めていた。喫茶店でも。すでに写真界で注目されていたエルスケンが妻と世界一周に旅立つのが1959年。途中、立ち寄った日本が気に入り、三カ月も過ごした。その時、大阪釜ヶ崎、京都、下津井、東京などでシャッターを切ったことで、半世紀前の日本の姿が残った。まだ傷痍軍人があちこちにいる。幼い子がねんねこでさらに小さい弟妹を背負い子守りする。町を荷車が行き交い、盛り場には垢抜けない小悪党がかっぽしている。今なら、いくらでも目にする、きれいな小作りの顔のハンサム、美女がほとんどなく、日本原人の顔をしている。下駄姿も多い。まるで現在の中国の地方都市みたいな光景もあり、この半世紀の変化を考える。
梯久美子の話題作『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』新潮社を読み始める。梯さんにインタビューする予定。佐々木譲の警察小説『沈黙法廷』新潮社は半分くらいまで。「クリ詩マスショー」の準備も。プレゼント用の絵を描いたり、やることが多過ぎて、手と頭が追いつかない。「大人の休日」パス利用は、今回もパス、になりそうだ。
あ、そうそう、河出文庫の新刊、アンソロジー若冲』は、澁澤龍彦種村季弘安岡章太郎などとともに、林哲夫大兄の文章が収録されている。なんだかうれしい。