「アカハタ」の仕事で、横浜の神奈川近代文学館安岡章太郎」展を見てきた。カナブンへは何度か来てるが、この日は外国人墓地脇の石段を上り、という初めてのアプローチ。見上げると空が晴れてきた。いい風が吹くが、気温は高い。「安岡章太郎」展をじっくり、メモを取りながら見て、図版を買い、当初の予定通り、山手駅を目指す。うまくバスがつかまれば「大和町1」まで、と思ったが、目の前をそのバスが走り去る。仕方ない,歩きだ。坂をえんえん下るかっこうで、山手駅入口交差点にたどりつき、ずんずん商店街を歩く。途中、いい感じの造りの銭湯を見つける。開店前だが、もう暖簾は下がっていて、ひと風呂浴びるか、などと思うが、いやいやとなおも歩き、「自然林」さんにたどりつく。よかったあ、開いてたあ。この詳細は「古通」に書くつもり。
電車での移動中、文春文庫の北尾トロ『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』を読んでいたのだが、めちゃくちゃ面白い。ちょっと、私「めちゃくちゃ面白い」を使い過ぎか。いや、でも「面白い」。店の描写もそうだが、いちいち抱く感想が、トロ文体で笑わせる。福岡の「古本センター飯塚店」は懐かしい。トロさん、実家が門司港で和菓子屋を営んでいる。「松葉屋」だ。「看板商品は昔からやっている『みなと饅頭』ってやつで、最近は修行中の3代目が作るどらやきも評判でね……、ローカルすぎる自慢話はやめろ!」という独り乗り突っ込みに笑う。只見町「たもかぶ」へは、ハートランド斉木さんの車に4人便乗して向かう古本旅。私は会津若松から只見線経由で向い、ここで「鉄」に目覚める。武蔵野線古本巡りは、私も前から夢想しながら、実現できていないコースだ。
「古本屋にいるときの常で、入店して5分か10分は気が散って集中できないが、そのうち雑念がなくなり、なにも気にならなくなってくる」なんて記述、ぼくはそう書いたことはないが、その通りだ。古本アタックの真実を突いている、とガシガシ線を引く。「粘り強いといえば聞こえはいいが、ぼくの場合、延々と店内に滞在する理由の多くはあきらめの悪さなのだ」にも同感、線を引く。今日「自然林」で体験してきたそのままだ。