okatake2016-04-10

春は静かに通り過ぎていく。昨日の強風(南風)で、花はかなり散っていった。まさに花吹雪という中を川越ぺぺ古本市へ。小平中央公園までは自転車。そこから西武線で鷹の台から本川越へ。一時間に一本か二本、直通があり、それを待って乗る。本川越駅前、広場にワゴンが10台ほど並ぶ。本を二冊、あと「ライカ」の灰皿(かっこいい!)、花王がおそらく景品で作ったクレヨン、絵はがきなどを買う。観光の中心地から逸れて、知らない川越を少し歩いてみる。駅西口に、東武東上線「川越」駅に続く道とつなぐ、新しい連絡道路ができていた。
坪内祐三『昭和にサヨウナラ』扶桑社を、電車のなかで読む。中村勘三郎丸谷才一ほか、世を去った人たちとの交遊が、手に触れるように回想される。「ジャパン・アべニュー」という丸谷才一編集顧問のバブル時代に作られた、執筆者が豪華な会員誌の話がでてきて、会長が坪内さんの父上だった。林望はこの雑誌から名前が出ていく。私も古本屋で買って何冊か持っている。この雑誌の編集者に、私がなりかけたという話があるのだ。子どもが生まれ、一馬力となり、さあ大変だと、知り合いに仕事を頼みに回ったことがある。その中に、瀬戸川猛さんがいて、新宿「トップス」でお目にかかった時、「ジャパン・アベニュー」編集に欠員が出て、キミのことを推薦しておいた、丸谷さんにも話をしてある、と言われたのだった。「給料は安いけど、海外に行けるよ」と瀬戸川さんは言った。いくら安くても、最初に勤めた編集部以下ということはないだろう、ありがたい話だと思っていたが、雑誌はつぶれ、話が消えた。
あのまま「ジャパン・アベニュー」が数年続いて、私が無事編集部に入っていたら、どうなっていたであろうか。あのとき、もしあれが、ああだったら、という、あみだくじのような人生である。
雑誌「雲遊天下」を出しているビレッジプレスから、菅原克己の詩をもとに山川直人がマンガ化した『日常の椅子』が出た(写真)。これ、いいですねえ。菅原克己の詩世界が、こんなふうに絵になるなんて、思いもよらぬことであった。「マクシムどうだ 青空を見ようじゃねえか」。