okatake2016-02-03

昨日は「ギンレイ」で「ナイトクローラー」。チンケな小物のこそ泥が、事故現場を撮影してテレビ局に売るという仕事に出逢い、自己顕示の道具として熱中していく。ニュースショーを担当する、瀬戸際の敏腕女性ディレクターとのやりとりの中で、より高価に売れる商品を、刺激的なネタを、と彼は常道を踏み外していく。カーチェイスのシーンに迫力あり。主演男優(ジェイク・ギレンホール)は、は虫類的風貌でまばたきせず見開いた目が怖い。
九段下「サン毎」で本選びを終え、ここから地下鉄乗換えが面倒で、時間の余裕もあるし、皇居周囲を半周する感じで歩く。夜の大手町から銀座クルージングだ。やはりランニングする人は多い。歩くのに邪魔というほどでもない。森のように聳える巨大ビル群、その下を歩く。これはこれでいい感じなり。
ラジオ終え、国立「ブ」を覗いていると桐壷屋さんにバッタリ。ひさしぶり。誘って居酒屋で近況を聞く。安保世代。高度成長期に高給を取っていたので、早期退職されたが年金はけっこう貰えているとのこと。うらやましい。パソコンはネットの問題で、いま休止中。本も「ささま」に大量処分した由。
龜鳴屋から矢部登さん随筆集『田端抄』が出た。これまで矢部さんが出されて来た同名タイトルの小冊子7冊分に、ほかで発表した田端の文章を集めてできた。簡易な装幀ながら、非常に好ましいたたずまい。巻末のモノクロ写真のグラビアページ、これもいい写真だ(小幡英典撮影)。「石川書店」が写っている。矢部さんは1950年田端の生まれ。戦後の匂いのする、まだ開発前の東京を知っておられる。露店の古本屋を見た、という記述も。田端に関する俳句、短歌も随所に引用され、田端文学誌としても貴重な著作となった。
文遊社からは、野呂邦暢小説全集の新刊『猟銃・愛についてのデッサン』が。単行本未収録の「縛られた男」「まぼろしの御嶽」「ある殺人」「ドアの向う側」など、ミステリータッチの短篇も収録される。解説的役割の巻末エッセイで、福間健二さんが、自身の佐藤泰志との交友について触れ、二人とも野呂邦暢が好きという点で一致した、というようなことを書いておられる。ううむ、とうなずいた次第であった。