梅が満開

すべてこともなく、年をまたぎ越す。大晦日には家族で、AEON MALLシネコンで「スター・ウォーズ フォースの覚醒」を観る。なにしろ鳴り物入りの話題作。大入り満員で、次回を待つかと思ったが、客席は3割ぐらいの入り。最初の公開から約40年、ハン・ソロ、チューバッカ、そしてレイヤが年経て画面に登場すると、さすがに感慨がある。出し方も巧い。最後の最後に見る影もなく老いたルーク(60代半ばなり)が孤島に立つ姿は、神々しくさえあった。
正月三が日は、輝かしき晴天で、本日3日、思い立ち低山歩きへ。青春18を使うには出立が遅く、近場で300m級をと考える。あれこれガイドブックを参考にし、東武竹沢駅から官ノ倉山(344m)を経て、東武小川町駅へ至る3時間弱のコースを選ぶ。
竹沢駅は人影もない淋しい駅で、キオスク、売店、駅前に立ち食いソバ、コンビニなどいっさいない。自由通路で反対側に出たら、庇に蜘蛛の巣がかかっていた。蜘蛛の巣がある駅など、いまどき珍しい。少し歩き出すと、背に裏山を従え、余裕ある地所に野菜を育て、川や水路に恵まれた、静かな山里をいただく集落である。焚火の白い煙が見え、燻された空気が漂っている。長い舗装路のアプローチがあり、天王池を拝み杉木立の山道へ。標高差は234mと大したことはないが、容赦なき上りがえんえん続き、汗みどろになりあえぐ。なんという頼りない体力であろうか。使い古した充電器みたいだ。ピークで壮年のグループとコトバを交わし、記念写真のシャッターを申し出て切る。里へ降りてからも、家族連れと夫婦の地元民に、それぞれルートを確かめ、コトバを交わす。こういう場所だと、自然に見知らぬ人に話しかけることができる。広い意味での旅人の功徳か。山道が尽き、里へ降りてからの行程がこれまた長い。254を延々歩き、ようやく小川町駅へ。こちらは飲食やスーパーのある駅前。埼玉は広い。官ノ倉山コースは、舗装路のアプローチが長いのが難点だが、体を酷使した力感もあり、バテバテというほどでもなくちょうどいい登山であった。周囲にさえぎるものもなく、頂上からの見晴らしもいい。
里へ下りて、老夫婦に道を聞いているとき、目の前に白い花が真っ盛りに咲いていて、「あれは何の花でしょう?」と尋ねると、「梅ですよ」と答えが返ってきた。正月に、梅が満開とは。
車中はディック・フランシス『査問』を再読。これも5回目ぐらい。ところどころは記憶にあるが、忘れていることも多く、再読を楽しむ。届いた年賀状は数えていないが150枚くらいか。