昨日、快晴。盛林堂さんの万全かつ心づくしの準備により、無事「銀盛会館」古本市がスタート。半開きのシャッターの隙間から、はやる男たちの脚、脚、脚が見える。10人くらいか。この人たちはミステリ・大衆小説マニア連で、ぼくの棚は見向きもしない人たち。ここに、開店まもなく純文学チームが突入し、真剣勝負が始まる。「カバン預かります、買った本も取り置きしますよ」と叫ぶが、虚しく声が拡散する。それどころじゃない、のだ。
ほとんどが10冊以上買っていく。それも木山捷平小沼丹野呂邦暢小島信夫といったところが(これは盛林堂の出品)がバカスカ売れていく。いやあ、こんな光景は見たことがない。ほとんどファンタジーだ。けっこう若い人も混じり、それが一万円近く、ホクホクと買っている。転売目的のネット業者もいるだろうが、ここは、いや文学は強し、と思っておこう。
第一陣が去ったあと、何もなかったように静けさが訪れ、しばらく無人に。しかしまた午後から、ぽつぽつと途切れなく客があり、前回より、とにかくお客さんが多かった。ありがたい。東京堂の古ツア・岡崎のトークでファンになってくれた、という上品な御婦人が、新刊も古本も買ってくれ、上気した感じで我々に話しかけてくれた。「古本病にかかりました」と、ぼくの旧著のタイトルをもじって、そう言うのだ。申しわけない気持ちだ。けっきょく、この女性、娘さん二人も連れて、夜のトークにも来てくれて、古本家族ができてしまった。そのほか、顔見知りの方々、いつもありがたい。
売上げはダントツ「盛」(レベルが違う)、次点が「古」、ぼくは最下位。しかも間違いなく売れる『野呂邦暢古本屋写真集』を3冊放出して、ようやくそこそこの売上げ。それでも、10箱送って3箱売れた感じか。
ぼくは、夕方、用意したタオル、下着の替えを持ち、銀盛会館からだと非常に近い銭湯「天狗湯」でじんわり温まる。この極楽感はなんだろう。「ああ」とか「うう」とか知らぬうちにうなっている自分に、そうか、昔銭湯でうなっているお爺さんがいたが、こういうことか、と思う。上がって、休憩室でビールを飲んでいると、「旦那」とぼくに呼びかける70くらいの男性があり(「墨(さんずいがつく)東奇譚」みたい)、長々と話しかけられる。その前は、番台のおかみさんと長話していた。一種の軽噪ならん。最初メガネの話から始まり、要領を得ぬ一人語りが続き、「共同通信の記者が知り合いで」とか、「兄が東大」と言うので、「お兄さん、東大ですか」と聞くと、「東大へ入れる高校へ通っていた」と言い直す。なんや、それ!
夜のトークも満席。古ツアの古本屋写真ストックをフルに活用。ぼくも秘蔵の「天牛書店 アメリカ店」での、若き山本善行が本を買う姿、紳一郎翁とのツーショットなど秘蔵写真を出す。楽しいスライドショーになった。これなら、何回でもできそう。
連日、最寄り駅からタクシーでの帰還。駅前駐輪場にマイ自転車がずっと止ったままだ。そろそろ回収しないと。
本日は、同じ銀盛会館で、盛林堂さんが在庫大放出で全品100円均一セールをやる。店舗店頭の均一の充実はみなさん御存知。その十倍ぐらいの量で会場が埋めつくされる。いや、これはすごいことになりますよ。アドレナリンをがんがん出して、参戦してください。