高田「世界館」

「大人の休日」4日目、最終日。メインイベントともいうべき、新潟市「高田」へ、朝の「はくたか」で向かう。金沢ブームで、北陸方面は満席。「高田」へ行く大きな理由は三つ。もちろん、「耕文堂」さんという古本屋があるから。それにNHK・Eテレ「Uー29」で放送された同地で100年維持された元芝居小屋、いま映画館の「世界館」を訪ね、とにかく映画をここで一本見ること。時間があったら、久世朋子さんが出身の「高田高校」も見ておきたかった。で、三つともかなえた。
くわしくは「古通」に書くつもりだが、「世界館」は、20代の上野くんという若者が、支配人、映写技師、プログラム作成、ポスターからチラシ、モギリから便所掃除まで、一人でこなしている映画館。とにかく彼に会いたかった。この日、「あん」と台湾映画「共犯」を上映、ぼくは後者を、結局、広い館内、一人で見る。「共犯」はミステリ仕立ての素晴らしい青春映画だった。光と水をうまく使う監督で、岩井俊二を思わせる。そのことを上野くんに告げると、パッと明るい顔になった。そうか、彼としては、こっちを上映したいんだな。入館料1500円だが、500円ぐらいは、この館内に入っただけでネウチがある。
雪国「高田」の、雁木造りの古町を、あちこち写真を撮って歩く。どこを撮っても絵になる町。ヴォーリズ設計の教会も。寂れて沈滞したおかげで、フォトジェニックな町の通りと風景であった。
これで「大人の休日」を使い切った。これほど、うまく使ったのは初めてかもしれない。たぶん交通費総額は本来なら6万円を超えている。それが1万5000円。いちおう、方向を一ヵ所決め、あとは出たとこ勝負が、たった一枚の切符を使って自由自在、というのが、このシステムの魅力。魔法のキップだ。
高田「耕文堂」は、恐るおそる訪れたが、ふつうにちゃんと営業していて、ご主人の話も聞けた。均一と棚から二冊買う。店内の写真も撮影。これも「古通」にちゃんと書く。乞うご期待。
さあ、明日から日常が戻ってくる。つかのまの「古本寅さん」であった。車中では、ぐいぐい書評用の本も読め、けっして時間を無駄にはしない旅であった。