長い雨。こうして家に閉じ込められるのは、仕事に集中できるからいい。晴れると、すぐ自転車に乗って、どこかへ行きたくなるからだ。『気まぐれ古書店さんぽ』(工作舎)、三校を終え、ようやく手を離れた。初校から三回、読んだことになる。古本屋探訪に、プラス、坂巡りやさんぽ、文学さんぽ、あるいはマイブームを乗っけて、原稿を書いてきた。毎回、何かしら新しい知見(というほどのものでもないが)や、発見を加えて書くことを課してきたが、まあまあうまく行ったのではないか。ぼくの自伝的要素もあり、出れば、ありがたい一冊となる。「東京堂書店」でのトーク(古ツアさんをお迎えし)も10月19日(月)と、いちおう決っている。ほか、やれることあればやりますので、工作舎さんまで、お申し出ください。
「作家さん」という言い方が、ずっと気になる。どうもなじめない。いつか平気になるのか。いつ頃から言い出したか。「小説家さん」とは言わない。「画家さん」は言うか。「音楽家さん」とも言わない。「イラストレーターさん」も言わないのではないか。「書店員さん」は言うか。なんだろう、この言う、言わないの違いは。「映画監督」はそのままで、「監督」は「監督さん」の気もする。丸谷才一が生きていたら、謎解きをしてくれたろうか。「作家」の場合、それだけでは坐りが悪く、とりあえず敬称っぽく、そう呼んどけ、無難にな、という感じもありますね。
「彩の国」で300円で買った『ヴィヨン全詩集』岩波文庫を、パラパラ読んでいる。ケンカ、殺人、窃盗と悪事を繰り返した悪党がヴィヨン。私が買ったのは昭和四十年の初版で、旧字旧かなで栞紐がついている。半分近くが注と解説だ。現行ではどうなっているだろう。
年に一度くらい、受注のある「潮」10月号に、服部文祥ツンドラ・サバイバル』書評を書いています。前も書いたかもしれないが、著者の服部さんには面識はないが、その奥様、お義母さまと面識があるのだ。だから、どうだ、って話でもないのですが。