田中小実昌を読んでいたら、映画館で映画を無性に見たくなって「ギンレイ」へ。ジュリエット・ピノシェ主演「おやすみなさいを言いたくて」を見る。イーストウッドアメリカン・スナイパー」と併映。今日が最終日とあって、客席は満席だった。「おやすみなさい」は、危険な紛争地域で写真を撮る報道カメラマンの役をピノシェ。教師の夫、二人の娘をいつも家に置いて、活動を続ける。しかし、思春期の娘を含め、家族がそのために壊れていく。アイルランドの海辺のシーンがきれい。ピノシェは静かなる熱演と言っていいが、とにかくストーリーは重たく、家族を省みず危険と背中合わせになる女性報道カメラマン、というのに感情移入がしにくい。途中で、二人、ご老人が席を立って出ていった。悪い映画というわけではない。
映画を見終え、渋谷東急の古本市へ。ぼくはめったに行かない。二度目くらいか。神保町も即売会も中央線沿線の古本屋もこの時期休み。行くところがない古本者は、ここを目指す。けっこうにぎわっていた。ユリイカ小津安二郎」(なぜこれまで持ってないのだろう)を1000円(石田書房)、堺正章のシングル「苺の季節」を200円で揚羽堂から。フライングブックス山路くんが会場にいて、挨拶されて立ち話。もう10年ぐらい前に取材をしている。よく覚えていてくれたなあ。東急のデパート展は、少し会場が狭くなり、参加店が減ったそう。これは南館が工事中ゆえで、またもとに戻るかもしれない。デパート展がどんどん撤退していくなか、貴重な存在だ。レジで精算するとき、担当の女性店員が堺正章のシングルを見て「あら!」と言い、近くにいた同年輩の女性店員に見せ、盛りあがる。その盛り上がりにぼくも参加し、しばし歓談。デパート展で、こういう反応があるのは珍しい。いい感じであった。
昨夜から読み始めた藤田宜永『血の弔旗』を、電車のなかでもグングン読む。おもしろい。