ちくま文庫、今月の新刊に古沢和宏『痕跡本の世界 古本に残された不思議な何か』が登場。評判になった前著『痕跡本のすすめ』以後、さらに加わった著者のさらなる探究と活動が、書き下ろしで炸裂している。帯文はぼくが書かせてもらった。これで五つ葉・古沢くんも、ちくま古本村に仲間入り。「あとがき」を見ると、これまで五つ葉くんの拠点となっていた犬山の古アパートが壊され、新たに民家を改装した新店舗へ移ったようだ。古本を触っている人は、おとなしい人が多いだけに、よく喋り、よく動く五つ葉くんの今後に期待したい。
今週執筆分の「イチオシ」にした新保教授の『ミステリ編集道』、付箋だらけとなる。鮎川哲也の奇人ぶりにびっくり。そういう人だったのか。シャイが究極まで行ってしまったら、そうなるのか。タクシーに乗らない。人が見てる前でものを食べない。編集者を自宅に上げないなど。詳し過ぎる人が多いミステリ読書人に比べたら、ぼくは門外漢と言っていいが、いや、この世界、ヘンな人が多い。小林信彦のコラム集『地獄』シリーズを作った集英社の山田は、世間のことに疎く、「マスオさん」(サザエさん)を知らなかった。考えたら、この人(編集者)がいなければ、この作家が、この出版社から本が出ることはなかった、という例がたくさんある。編集者は一人、いればいいのである。