『読書の腕前』さらに重版かかって4刷となる。このご時世にありがたい。ただ、初版部数がそれほど多くないから、そう聞いて想像するほど総部数が多いわけではない。ただ、重版がかかるというのは、心に弾みがつく。
昨日は、石田波郷取材で砂町再訪。前回はなでただけだったが、今回はいろいろ調べて上で歩くのだから違う。石田波郷旧居跡も訪ねた。ちゃんと表示板があった。なんでもないことだが、こうして足を運ぶことが大事だ。小名木川車庫跡、石田波郷記念館をチェック。砂町銀座路地の居酒屋で、昼の定食を、塩辛い声の昼間から飲んでいる地元民の会話をBGMに食べ、亀戸まで都電跡の遊歩道を歩く。1万5000歩のさんぽ。
夜は「オトパラ!」。時代小説について。帰り、最寄り駅近くで「桐壷屋」さんを発見、声をかけ「まっちゃん」で一杯。初めて入る。「コ」の字のカウンターで、ほとんどが一人客。銚子で焼き鳥を食べて、さっと帰るという感じ。男たちの楽園。常連は常連同士、隣り合って、いろいろ喋っているがうるさくはない。遅く入ると、焼き鳥の種類がもう限られてくる。レバーを2串食べたが、うまかった。おしんこ、もつ煮込みも。ビール2本。それで2人で2700円。いい店でした。谷川書店さんがよく来たらしい。
夜、ユーチューブで英語字幕入りの「鬼畜」全編を見る。そうか小川真由美が子ども3人と住んでいたのは「男衾(おぶすま)」か。駅の感じは、今も変わらないようだ。東武東上線の、もう「寄居」に近い駅。最初、関西在住時代に見た時は、とんでもない田舎だと思っていた。そこから、緒形拳が住む川越まで、電車で45分ぐらいはかかる。よくできた映画だなあ、と思いながら、最後おいおい泣く。親に殺されかけ、黙秘を続ける6歳の子が、府警の大竹しのぶの優しい諭しに、「ガッチャマン」とだけ答える。ここ、いいねえ。「利一!」「お父ちゃんなんかじゃないやい。知らない人だ!」。くくくぅ……5回目ぐらいだろうか。
このところ「図書」(岩波)の津村節子の連載がずうっと面白い。本になるのが楽しみ。若き日よりの、夫・吉村昭との苦節の時代を描く。3月号では、吉村の「鉄橋」が芥川賞候補になる。その知らせは、「ガリ版刷りの藁半紙」に書かれていた。時代を感じますねえ。夫人に宛てた手紙がどれもいい。年とって、もう働くて済むようになったら、吉村昭全作をじっくり、丁寧に読みたい。同じ号に細見和之が「大阪文学学校創設六十年」という文章を書いている。「文校」には、荒川洋治さんが講演した際、二度ほど訪れ、チューターに知り合いもいたり、ぼくは学生ではないが、親しみ深い。だから、面白く読んだ。
中央公論新社が「アンデル 小さな文芸誌」というPR誌を出しているのを知らなかった。女性読者を意識した作り。おお、われらが木村紅美さんが連載小説「まっぷたつの先生」を書いている。がんばれ、木村さん!(紅美ちゃん、と書きそうになったが、「ちゃん」呼ばわりするとセクハラになるらしいので)。