ひさしぶりに徹夜して、講談社文芸文庫木山捷平『新編 日本の旅あちこち』解説10数枚を早朝に脱稿。文庫解説は、私の営業品目の中では気の張る仕事で、すらすらとは行かない。ましては木山捷平だから、これは手強い。メモし、構想し、それを元に立ち上げていく。軌道修正のため、ある部分をばっさり削ったり、またつけたしたりで着地点を見出していくのだ。文庫解説も、これまで10本以上はやっているはずだが、そのたび「自分にはこういう仕事は向いていないのではないか」などと苦悶する。まことに情けない。出来はともかく、終えたら、とにかくホッとする。
昨夕は、義理のある編集者からの誘いで、霞ヶ関イイノホール山下洋輔トーク&ライブ」へ駆けつける。休日の官庁街は人影少なくがらんとしている。日比谷公園前に来ると、雨は止んだ。イイノホールって、こんなだったっけ。きわめて壮大でモダンなビル。長いエスカレーター2つを乗りつなぎ、あれは4階ぐらいの高さがあるだろうか、ロビーから日比谷公園とその向こう、高層ビル群が見える。それがうつくしい。休憩時間にロビーへ出ていると、「おかざきさん」と声をかけられた。見ると白楽「ツィード・ブックス」の細川くんだ。聞くと山下洋輔のファンだという。まだ若いのに。手には「ディスク・ユニオン」のLPレコードらしき袋。トークで話していた、山下さんが音楽をつけた前衛ポルノ「荒野のダッチワイフ」を「見たいねえ」と言うと、DVDを持っていると言うではないか。細川くん、なんという奴だ!
ライブ終えて、編集者に挨拶もせず、あわてて帰還。また一週間が始まる。車中では、今週取材の入った三上延ビブリア古書堂の事件手帖 6』を、メモしながらひたすら読む。今回は太宰治だ。
イイノホールの入ったビルは、やっぱり建て替わってました。そうだろう。以前、落語を聞きに行ったこと、何度かあったもの。こんなじゃなかったよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/飯野ビルディング