田中小実昌『コミさんほのぼの路線バスの旅』という本があるが、この巻頭にある「バスが大好き」が、三泊四日で、近所のバス停(練馬区)から路線バスだけを使って、ぐるり東京湾を一周し(久里浜から金谷はフェリー)、浅草まで行くという紀行エッセイ。1887年「旅」に掲載された。テレ東の「ローカル路線バスの旅」の企画は、このエッセイを読んで発案されたのではないだろうか。蒲田で600円のシャケ弁を買ったら、となりの弁当屋の方が50円安く、オカズも多いので「くやしくってしょうがない」なんて書いている。このシャケ弁をバスの中で食べるのだ。物価の推移は簡単に比較できないが、約20年前の600円は高い。シャケ弁はむしろ今の方が安くなっている。その分、暮らし易くなっているかといえばそうでもない。
なんだか、無性にバスに乗りたくなってきた。