静かな年の暮れである。好天が続き、空が明るい。空気がしんとして、ものみな明るく見える。
こう書くと、ちょっと志賀直哉の気分だ。
関川・谷口『秋の舞姫』を再読。もう10回は読んでいるか。絵の魅力もあって、何度読んでも新鮮である。解説で川上弘美さんが、このマンガのおかげで「鴎外といえば、悠々泰然とした、しかしまなざしの奥に一抹の弱みをふくんだ男にしか思えなくなってしまった」と書いている。ぼくもこのシリーズを読んだおかげで、啄木は妙に甘ったれな、むやみに楽天的で、それでいて人なつっこく、憎めない男としてイメージされている。
書評用、川本三郎成瀬巳喜男 映画の面影』を読みはじめている。読んで読んで、今年も終わっていくのである。