昨夜、毎回脚本家が変るTBSドラマ「おやじの背中」の、鎌田敏夫脚本、渡瀬恒彦中村勘九郎主演編を見る。秩父の風景がとてもいい。最後のクレジットに「赤いドリル」登場。思わず「おおっ!」と声が出る。ご当人がブログで明かしているが、渡瀬が安保世代で、若き活動家たちが家に集って議論する。そのとき背後に映る本棚に並ぶ、運動、思想関係の本を揃えて貸したのが「赤いドリル」だ。背景で少し映るだけだから、小道具の本を適当に並べておいてもかまわないのだが、リアルを重んじた。しかし、20年は若いはずの渡瀬恒彦は、ちょっとリアルじゃなかった。
武藤良子さんが、ときどき書く、アトリエとして使っているアパートについての身辺雑記の新作がアップされて、やっぱりすばらしい。明日引っ越すと突然告げる老婆。電気もつけず暮らしている。洗濯ものを干すのに、洗濯バサミを使わぬため、しょっちゅう風に飛ばされる。武藤さんはときどきそれを拾ってやるのだが、それを手にしたときの絶妙な感想など、もう少し描き込めば、立派な短編小説になる。いや、身辺雑記より短編小説の方がエラい、と言っているのではない。これでじゅうぶんという人もいるだろう。しかし、ここまで書けるなら、もう少し細かく粘って書けば、もっと奥行きとコクが出るような気がする。余計なお世話か。
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国立近辺の方へ。在庫僅少の、『岡崎武志挿絵図録』(トマソン社)が、ただいま「増田書店」の地元作家コーナー(入って右の棚、一番奥)に平積みになっております。増刷されることは考えにくいので、もう出ているだけ。ぼくの頑張り次第では、将来、値がつくかもしれません。