昨日は、「サン毎」書評用読書のメドがついたので、寒風吹くなか阿佐ヶ谷「ラピュタ」へ駆けつけ、未見の森繁主演「森繁の僕は美容師」(1957)をじつに楽しく見る。子だくさん(というより扶養家族が多い、というべきか)の男やもめで美容師がモリシゲ。このとき、まだ40代前半。なぜか「おネエことば」を使う。ちょうどクレア・マリィ『「おネエことば」論』青土社をおもしろく読んだところだったので、その符合におどろく。中村メイコ飯田蝶子江利チエミ、坂本武、水戸光子若水ヤエ子などが脇を固める。舞台はどうやら小岩駅前ならん。このころ出来始めたトリスバーのいちばん安いウイスキーが35円くらい。パーマが350円。いまの物価は15~20倍くらいか。最後、物干し台で星空をバックに森繁調で唄をうたうモリシゲ。それにあわせ、蒲団から顔を出してコーラスをつける子どもたち。これぞ、アメリカ映画のホームドラマ調を翻案した日本映画の情感なり。昼間の電気代節約のためか、台所につけた紐付き天窓が珍しい。森繁の「巧さ」を存分に堪能できる。この役がこなせるのは、いまでは、もう少し若き日の西田敏行ぐらいか。見て損はありません。