okatake2014-01-08

1月2日に音楽プロデューサーの渡辺有三が64で、3日にやしきたかじんが64、海原しおりが58、浜野保樹が62で、昨年末に65歳で大瀧詠一、と65の壁を越えられず、次々と著名人がこの世を去る。ぼくは今年春で57になるので、死亡記事については、これまでよりナーバスになってチェックしている。
浜野保樹さんはぼくにとっては、岩波新書小津安二郎』の著者。これは引用の典拠の問題でクレームがつき、回収絶版となったいわくつきの本。しかし、引用についてはボーダーライン(新書という役目がら)にあったともいえ、入門書としてはよくできた本だったと思う。古本屋ではいまでも時々見るし、見れば買うようにしている。浜野さんとは、「森本毅郎スタンバイ!」に出演された折り、名刺交換してことばを交わしたことがある。さっそく、『小津安二郎』の顛末について、短時間だがお聞きしたが、いろいろ裏があったようだ。自分にも起こりうる災厄として、ぼくはその話を真剣に聞いた。
新年の家族による「ブ」詣で、コンビ二コミックスを風呂読みように買う。泉昌之の傑作『ダンドリくん』が一冊本に。ちくま文庫で二分冊で収録されていたが、どうやら品切中らしい。これが1990年から91年の作だが、サラリーマンのダンドリくんが、出勤の駅のシーンで、改札でキップをなくして流れを止める人や、ホームの電話で女とダラダラ長電話する男に怒っている。四半世紀前の近過去、いまは失われた日本の風景の描写として貴重だ。巻末に97年に書かれた「平成」のダンドリくんが付録でついている。ケータイ、パソコンが普及し、世の中ゼンタイが「ダンドリ」になったのを怒っている。

青木正美さんから新刊『詩集 古本屋人生史』(青木書店)をいただいております。青木さんは日記魔としても有名だが、同時に15歳から詩も書いておられた。現在までの心境、いろいろな古本屋稼業の現場が詩につづられている。「過日車で、神田の帰りに吾妻橋のたもとのM書店前を通った」(「名物先輩二人」1991)という個所があり、閉店の貼り紙を見る。これは坂崎先輩もよく通った「宮崎書店」なり。上京してすぐ、東京中の古本屋を巡ったとき、ぼくはこの店を訪れている。これほど「古本」「古本屋」の文字が頻出する詩集はほかにないだろう。1000円+税、と安い。関心のある方は「青木書店」(03-3604-7808)までお問い合わせください。