晴れた日がつづく。電車のなかで読み継いだ『続 折々のうた』も「冬」の章。
世間(よのなか)を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば
は、山上憶良の歌。世間がつらいと思っても、鳥のように羽根がないから飛び去ることもできない、というような意。「やさし」は「痩さし」で、身も細るほどの気持ちを意味するんだそうだ。「優しい」と語源は同じ。勉強になるなあ。
「唇を突き出しているしみじみと日記にもない今日が暮れゆく」は山崎方代。いいですねえ。没年を見ると、歌人俳人には若死にが多い。病を得て、作歌作句に向うのか、それとも。あ、方代の没年は70ぐらい。
「秋」に、古書の歌もある。佐佐木信綱「からうじてわがものとなりし古き書の表紙つくろふ秋の夜の冷え」。