okatake2013-10-26

台風はいくぶん列島から逸れたようだが、それでも雨は強い。今日、午前中で止むということだったがそうはいかなかった。高円寺西部会館経由で田端。田端文士村記念館で川本三郎さんのトークがあり、学芸員の方にお招きいただいていたので駆けつける。明治文学は維新から日清日露と戦争を挟む激動の時代で、文学は自然主義リアリズム、対する大正は短く、ひ弱な時代で、芥川、佐藤春夫と「幻想」を作品に描くようになる。佐藤の「西班牙犬の家」で描かれる「家」も、建築としての「家」で、明治文学が対象とした家族、親子など「関係」としての「家」とは違う。
そんなふうに、作品を紹介しながら、川本さんは大正文学について語る。非常に明解で、わかりやすく、頭によく整理されて入ってくる。大正が「花」の時代、という指摘もおもしろかった。
山下清が一種の徴兵忌避者だった、という話もおもしろかった。「笹まくら」を読んだところだったので。
終わって、川本さんに誘われ、田端駅前の中華でビール。近くにいた松永iモード真理さんと、お連れの若い女性も誘う。ぎょうざ、野菜炒め、シャーチュー、いずれも旨かった。日本映画の話など。川本さん、「そこのみて光輝く」を高く評価されていた。「池脇千鶴がよかった」とも。いまの若者の、シュウカツの過酷さについても話す。4、5回面接を繰り返し、そのたび同じことを聞かれる。その末に落とされたら、いくら社会は厳しいとはいえ、たまったものじゃない。それを数十社。ううむ、ぼくには無理だ。
店を出ると、雨は止み、空は明るくなっていた。
帰宅すると、木村衣有子さんから『京都の喫茶店 昨日・今日・明日』(平凡社)が届く。これは2001年『京都カフェ案内』を大幅、増補改訂した新版。知ってる名前がいっぱい出てくる。新しくできた店もたくさん紹介。こちらは知らないところが多い。ここに出てこないが、京都で同人誌を作っているとき、よく打ち合わせで「築地」を使った。いま、ぼくが京都でいちばんおいしいと思うコーヒーは「はなふさ」の酸味ブレンド。「さんぶれ」と言うんですね、店の人は。