台風接近、風雨強し。
午後、青柳いづみこさん『アンリ・バルダ』刊行記念トークショーを聴きにお茶の水へ。アマゾンの解説を添付しておきます。バルダの貴重な音源を聞きながら、青柳さんらしく緻密でユーモラスなバルダについてのお話が楽しかった。
「目の前の一秒が過ごせない気分、明け方になるとホテルの窓から飛び降りてしまいたくなる気分。表面にはあらわれない内的恐怖と戦うピアニストのプレッシャーを、通常の何百倍も感じてしまうバルダ。…そんなバルダに感応し、彼の才能を愛し、やっかいな性格に困らせられつつもステージをつくってきた日本の関係者たち。」(本文より)
著者は2005年に、『ピアニストが見たピアニスト』で著名な演奏家六人の演奏を分析し好評を博した。本書では、音楽関係者に高い人気を誇るひとりのピアニストについて、本人と「がっぷり四つ」になり、その人物像から演奏スタイルの背後にあるものまで凝視し書ききっている。
アンリ・バルダは1941年エジプト・カイロ生まれのユダヤ系フランス人。本国では「同世代のピアニストはみな彼を賞賛するのに、その演奏を聴いたことのある人は少ない、神秘のピアニスト」と評された。その演奏の魅力はひとつには、「弾く曲とスタイルによって、何人ものバルダがいる感じ」と著者が語る、多彩な表現力にある。彼はクラシック音楽界の中心地から離れて育ったために、演奏方法の流行にのみこまれず、19世紀の大演奏家たちの流れをくむピアニストから直接教えを受けた。同門の弟子のなかにエドワード・W・サイードがいる(本書にも登場)。
パリ音楽院やエコール・ノルマル音楽院で長年教授をつとめ、H・J・リムなどの指導にあたってきたバルダの、音楽理論や講習会での指導のようすも解説し、評論の読みごたえと、ノンフィクションのスリル、小説の美しさを兼ね備えた長編エッセイ。
十九世紀の大演奏家のセンスとテクニックを受け継ぎ、多彩な表現力で多くの音楽家の尊敬を集めるバルダ。その演奏から人物までを凝視し描ききった、渾身の一冊。出版社: 白水社 (2013/9/5)
以上、アマゾンからの添付
お昼をすませ、今日から二日間開催の新宿展を覗く。さすがに、雨の日曜日とあって人が少ない。岡島旦那、向井御大ほかに挨拶。
新宿展は、わりに新しめの本が多いが、それでもじっくり見ていくと欲しいものが次々と。結局、10冊は買ったか。古書現世に出ていた、1968年刊非売品の『酒の豆本』という小型絵本に瞠目する。編集はライトパブリシティ。挿絵はすべて和田誠だ。うーむ、と唸る。裸本で1500円だったが、これがカバーつきだったらえらいことになる。これが今あるとしたら、つぶれかけた古い酒屋に、だろう。買っとけよ、と思ったが、手が出ず。気になる方は、明日もやっていますので、見てきてください。
ぶっくす丈さんにたくさん古い新書が出ていて、川口松太郎『珠はくだけず』を200円で。なんてことない大衆小説の新書判、と思うでしょう。これが「平凡 映画小説シリーズ」で、映画化された同タイトルに出演した俳優たちが8ページモノクログラビアで登場する。某書店さんは4000円つけている。いやあ、見ないもの、こんな本。

秋山安三郎『東京っ子』は、タイトル通り、古き東京の姿を映し出したエッセイだが、後半、戦中から敗戦直後の芝居見物の月録になっていて貴重。