映画「そこのみて光輝く」

昨日、雨風強まるなか、五反田へ。
佐藤泰志原作 呉美保監督作品 出演:綾野剛池脇千鶴菅田将暉そこのみにて光輝くhttp://hikarikagayaku.jp/ 2014年4月公開函館シネマアイリス、テアトル新宿他 の初号試写を見る。傑作だと思った。見終わってすぐ、隣りにいた制作の「シネマアイリス」菅原さんと握手する。
主演の三人の役者の力が大きい。巻頭、夏のアパートの部屋で、下着一枚で寝転がる綾野剛。重いビート音をバックにカメラが、綾野の裸体をなめるように移動していく(綾野ファン必見)。頭のそばに数冊の文庫本。そうか、達夫は本を読む青年なのだ。彼が毎晩酒浸りで、幽霊のように生きる理由が次第にわかってくる。動かない綾野の回りを、天使のように飛び回る拓児役の菅田将暉もいい。遠足に行くように「山」(巨岩を切り出すためハッパを使う仕事に達夫は就いていた)にむやみに憧れる拓児は海辺の打ち捨てられたような集落に住む。山から逃げて、海辺をさすらう達夫。そして悲劇の女神・千夏(池脇千鶴)が黒い下着を身にまとって達夫の前に現れる。
呉監督の描写は正確で、徒歩、自転車、車の使い分けが巧い。CM監督のキャリアを感じさせるフォトジェニックな映像も気にいった。原作にドラマをうまく加味し、セリフに説明させすぎない脚本もいい。悲劇のカタストロフ、拓児の傷害シーン、花火が夜空にうちあがる。「灰とダイヤモンド」を想起させる。達夫と千夏。なにもかもがうまくいかないまま終末を迎えた二人が、夜明けの海で、仕方なく微笑み合うシーンが美しい。
エンドロールの頭、佐藤泰志の書いた特徴的なタイトル文字が白抜きで大きく出る。この効果もばつぐんだ。
午後、いきなり溜まったメールがバラバラと到着。昨日いちにち分、糞詰まりになっていたのが解消されたみたいだ。どういうことだろう。わからぬ。わからぬことばかり。
途切れず読んでいるスペンサー・シリーズ『ポットショットの銃弾』で、スペンサーがインテリ女性相手の会話で「最近、世の中は我々の手に負えない」と言って、相手が「驚いた、文学に通じた探偵?」と返す場面がある。検索したが、この引用元がわからぬ。