okatake2013-09-29

昨日、秋の一日、国立コショコショ市、盛況のうち終わる。駅からかなり歩く、人通りの少ない旧商店街にある古道具屋さんを借りて、20数店が古本を販売。
私はよく自転車でこの界隈をうろつくが、閑散とした印象しかなく、これは、ちょっと難しいぞと覚悟したが、なんのなんの、一日中、ひっきりなしにお客さんでにぎわうこととなった。これは衝撃だった。
いったい、どこで情報を得て、こんなに人が集ったのか。ありがたいことだった。本は段ボール箱2つとプラス、トートバッグに少しを出品して、箱一つ分が売れた。古道具として置かれているデスクや陳列台、本棚をそのまま借りての陳列で、古本がよく映えた。これもよかった。陳列に段ボール箱を使うのは禁止、というのも画期的であった。奥のカフェスペースも、始終、人がくつろいでいて、なんだかいい光景だった。特製カレーが40皿出て、売り切れたそう。すごい。
出店者があまり店のなかにいると、お客さんのジャマになるので、なるべく立ち入らないことにして、ぼくなどは、朝の準備と挨拶を終えて、高円寺の即売会へ出かけたほどだ。コケシ2体と、細々したものを買う。低価格のものに買いごたえがあった。しかし、倦怠感がひどく、しゃがんで下の棚を見ていて、立ち上がると頭の中が真っ白になる。知り合いに会場で声をかけられたが、うまく応対ができない。咳き込む。こういう状態が続いている。
結局、コショコショ市は5時仕舞いのところ30分延長して、無事終了。マルヤマくん、ゆず虎嘯の2人は準備も含め、本当にごくろうさま。売上金を、通知表が配られる生徒みたいに緊張して待ち、有志で国立駅前で打ち上げ。もっぱら古本、古本屋の話題で気づいたら4時間。これも楽しかった。欽ちゃんの番組、見逃した。
善行堂から山本善行選『黒島伝治作品集 瀬戸内海のスケッチ』サウダージブックス、届く。瀟酒ないいカバー。静かな予兆を感じさせる。黒島と言えばプロレタリア文学、代表作「渦巻ける烏の群」と来て、もうそれだけで未読の人はお腹いっぱいになるが、善行選では、故郷の小豆島のことをスケッチしたような文章を重んじて、知られざる黒島の魅力を伝える。版元のサウダージブックスさんも、小豆島から発信する小出版社。
無花果がうれた。青い果実が一日のうちに急に大きくなってははじけ、紅色のぎざぎざが中からのぞいている。人のすきを見て鳥が、それをついばみにやってくる。ようやく秋らしい北風が部落の屋根をわたって、大きな無花果の歯をかさかさと鳴らしている」
これは志賀直哉や梶井と同族の、よく冴えた目で観察した文章だとわかる。「本をたずねて」という作品を加えるあたり、善行らしい。
秋、小豆島へ誘われるような一冊だ。