okatake2013-09-18

記すことなき存在する、本読む日々。
小田光雄さんの「出版人に聞く」シリーズ第11弾、古田一晴『名古屋とちくさ正文館』(論創社)をいただいてます。名古屋と言えば「ちくさ正文館」、その店を作った名物店長による回顧。名古屋モダニズムの話も出てきます。このシリーズで、高原書店も取り上げてもらいたいですね。
その高原にいた、広瀬洋一さんの『西荻窪の古本屋さん』が本の雑誌社から出た。ぼくの名前が何ヵ所か出てくるので、紹介しづらいのだが、一つの町の古本屋さんが、どうして誕生し、いかに維持されているかが、売上げも含め、かなり正直に語られている。これだけ人に愛される店が作られるには、広瀬くん自身の歴史、人との出逢いの歴史の積み重ねによるのだと、本書を読めばわかる。いい奴だもんな、広瀬くん。
ぼくも関わった「西荻ブックマーク」の佐藤泰志篇で、佐藤の娘さんが会場にいらした話など、そうだったよなあ、と感動しながら読む。買い取ったばかりの古本を盗まれた、という話も、直後「赤レンガ」で、広瀬くんから聞いた。金額的には、まあ、大した被害ではないが、何より、取引成立して買い取った本を、ちょっとした気の弛みで、かっさらわれたことへの自責と屈辱が、そのときの広瀬くんの顔に現れていた。あんな広瀬くんを見たのも初めて。
また、常連客や店員はみんな気づいていると思うが、陰になって表に出てこない、奥さんの由佳子さんの存在が大きい。音羽館のシンボルマークが「おとわちゃん」という女性であるのは、そういうことである。
帯文も書いた穂村弘さんの、壁をぶちぬき、「赤レンガ」と直結させる案には笑いながら賛同。いっそ「キッチン キャロット」ともつなげるか。「赤レンガ」のコーヒーはうまい。
語り尽くせぬ感慨をもちながら、この一冊を幸福に読み終えた。
『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』は、ベネズエラの画期的な教育システム「エル・システマ」から生まれた、奇跡の指揮者・ドゥダメルを取り上げる。このドゥダメルという若き指揮者。こんな指揮をするんです。いや、驚いた。