okatake2012-12-05

初ストーブ その青い火 匂い 冬 新聞紙のかさこそという音とともに流れゆく時間 おはようございます。細川俊之です。
吉村公三郎監督「大阪物語」を見る。雁治郎と浪花千栄子の芸合戦、市川雷蔵香川京子。若い若い勝新太郎。雁治郎とケチぶりを競う三益愛子。もとは溝口が撮るはずで準備していた作品を、溝口急逝のため、吉村が引き継いで撮った。勝新がいいねえ。
あいかわず、ユニークな「股旅堂古書目録」が届く。海女の写真集と妖怪を一緒に並べるセンス。遊郭、変態などの性風俗もの、貧民窟など、つねに地を這う目線がすばらしい。それに、こんな神々しい表紙をつけて、股旅堂くんバンザイだ(岡崎さん、バンザイはいいから注文してください、と言われそうだが)。
ぼくは大正7年『あわて者 成功の思い出』、昭和2年『諧謔小説 金が敵』なんて本に目がいきました。昭和23年の『或る優等女子高生の夏季休暇日誌』というのも、いいねえ。
自分の書評をスクラップしたものを見ていたら、ぼくが丸谷才一に取材したのは2006年の11月の終り頃だったとわかる。『双六で東海道』が出たときで、このとき、「サンデー」では著者インタビューを、作者の一人語りの形式になっていた。ぼくは、これが書きづらくってしょうがなかったが(いまは、著者のことばはかっこでくくる形式)、丸谷さんのときは、なにしろエッセイや評論のファンだったから、自然に丸谷文体がのり移ってすらすら書けた。で、いま読み返して、のりうつりすぎて、一箇所、旧かなになってしまっているところがある。「「笹まくら」といふ長編小説」なんて書いている。当然、ここは「という」ですね。今年は吉本隆明吉田秀和丸谷才一と大物が亡くなった年として記憶されよう。勘三郎さん死去のニュースも驚いた。