okatake2012-11-30

日本映画専門チャンネルTさんのご好意により、同番組でテレビでは初オンエアの五社英雄監督「人斬り」の試写を見る。午後、新橋へ。ところが新橋で迷子。銀座線「新橋」から地上へ出て、本当なら2、3分で着く目的地が探せず、いったん地下へもぐったはいいが、汐留再開発で生まれ変わった巨大なエリアで右往左往。おまけに各所にある地図に、目的地のビル名は記していない。地下へもぐったのがまずかった。
どうにかこうにか、FSビルにたどりつき、Tさんに挨拶。ちょっと早すぎたようだ。
「人斬り」はすばらしかった。勝新太郎仲代達矢石原裕次郎、それに三島由紀夫というキャスト。武市の下で、もくもくとテロを敢行する「人斬り」以蔵を勝がチャーミングに演じる。試写が終わってからのトークで、出演していた山本圭が語っていたが、テレビから映画に来たということで、五社は苦労した。しかし、なにくそという姿勢か、映画的手法をむしろ駆使して、重厚な映像を造り上げている。三島由紀夫は、もう一人の「人斬り」を好演。「からっ風野郎」で見せた素人丸出しの芝居から進歩。アップに耐えて、いい顔だ。最後、いきなり切腹するシーンがあって驚くが、この一年後、本当に切腹して果てるとは。12月から随時「日本映画専門チャンネル」で放送される。さまざまな意味で必見、と言っておこう。
『エホバの顔を避けて』ついに読了。日本語の富をどこまで生かしきれるか、という実験であり、その受容は読者にゆだねられる。その富にじゅうぶん揺さぶられ、豊かな読書体験をした。いい時間が流れた。色彩が豊かなのは特筆すべきで、そのなかでも、最初は白と黒が交互に交替し、やがて彩色がほどこされていく過程がみごと。そして、精液を含む「水」、そして「空」を含む「空気」の表現が全体を支配する。マスターベーションのシーンさえ美しい。知的に操作された上で、イマジネーションの中だけで物語がふくらんでいくという前衛小説なのだが、すべてが具体的に書かれているためそのことを感じさせない。エホバの審判はついに訪れず、ユナが経験したその大いなる脱力と挫折は、戦後日本のイメージとダブって見える。審判が来れば絶命するのに、それを乞い願うというのは遠回しの自殺願望でもある。矛盾をはらみつつ、ユナの行動は、それを登場から批判(指摘)されることで、悩みつづける受難者として主人公は生き続けるのだ。それは預言者にふさわしい。
今日、サンデーの帰り、「ギンレイ」で「ドライブ」を見る。緊張と緩和、の織りなすスタイリッシュなヤクザ映画とでもいうべきか。かっちょいい主演のライアン・ゴズリングはどこかで見たと思ったら、そうか「ラースとその彼女」の彼か。可憐な人妻キャリー・マリガンはすぐわかった。「わたしを離さないで」の主演女優だ。主役の男がずっと楊枝をくわえているのは、きっと「木枯紋次郎」の影響でしょうね。監督は、東映のヤクザ映画や、日本の映画を見てるんじゃないかな。「ギンレイ」ではこのあと、「桐島、部活やめるってよ」と「テルマエ・ロマエ」という強力な二本立てもある。「テルマエ」は予告編ではやゲラゲラだ。
あ、「ル・アーヴルの靴みがき」もありますよ。