幻戯書房、驚嘆の新刊二冊

okatake2012-11-23

いやあ、驚いた。幻戯書房から新刊2冊、上林暁ツェッペリン飛行船と黙想』と常磐新平『明日の友を数えれば』(真田幸治装幀!)届いたのだが、上林の全集未収録文集が出るとは聞いていたが、こんなタイトルになるとは。しかも、このタイトル、巻頭に置かれた口語自由詩なのだ。うーん、としばらく絶句。
さらに驚くのは、四季派の抒情詩や、私小説作家の生活を歌った詩ではなく、純然たるモダニズム詩だ。
「素晴らしい引力だ、/人は上層に舞ひ昇つた。/アパートメントの屋上庭園、/事務所の屋根、/バラツクの物干䑓」といった調子だ。
詩のような短い断章あり、大山・升田の対局観戦記あり、これは上林暁による「バラエティ・ブック」。これまでの上林観に修正が求められる一冊だ。
本書の編集にあたったお孫さんの大熊平城さん(西荻ブックマークでお目にかかった)の「解題」には、荻原茂さん、夏葉社の島田くん、善行堂の名前が並ぶが、彼らの努力が前にあって、この幻戯書房の一冊が出せたことはまちがいない。
これで同様に木山捷平版を期待するのは、無理なことだろうか。
河出文庫石井好子『巴里の空の下オムレツの匂いが流れる』(名タイトル!)が収録されていたとは気づかなかった。解説は二本立ての豪華版で、堀江敏幸と犬丸一郎。後者を知らない人もいるかもしれないが、元帝国ホテル社長。ぼくは、久世光彦夫人の朋子さんの店「茉莉花」でお目にかかったことがある。パリッとした紳士で、オールドパーをロックで飲んでらした。ぼくなど20回生まれ変わっても身につかない、大人のムードが漂っていた。
日刊ゲンダイ」に、『レッキング・クルーのいい仕事』(Pヴァイン・ブックス)書評を書いて送付。