快晴。今週、関西行きがあり、それにあわせ、堺駿二さんのお弟子さん、という方に話を聴くチャンスを得た。堺駿二さんのお墓へお参りしておこうと思いたち、鎌倉へ。駅からバス。鎌倉霊園は桃源郷のようなのどかな風景。管理所で、墓の場所を聞くと、いまはそういうことにお答えしていないのだと言う。なるほど。少し食い下がって、じつはこれこれと言うと、奥から年輩の男性が出てきて、堺駿二さんのお墓は、いまはここにありませんと告げられる。なあんだ。失敗した。管理所の方は、あくまで規則を守りつつ、うっとおしい男(ぼく)に許容範囲で親切に対応してくださった。もしそれを知らずに、あの宏大な霊園を巡っていたら、その場でお墓に入るところだった。
帰りのバス停。待つ間、亡くなったご主人のお墓参りをしたという老女に話しかける。以前は鎌倉在住だったが、ご主人がなくなられていまは埼玉。いつもは車で来るのだが、今日は天気がいいから電車とバスを乗り継いで来た由。ぼくは、こうこうこうで、と顛末を話すと、「うちの主人のお墓参りをしていただいた、と思う事にします」とおっしゃる。なんと粋な答え方か。「では、そう思うことにします」とぼく。半日費やしてのしくじりもこれで帳消し。これを一編の短編に仕上げる腕が欲しい。
平日でも雑踏となる小町通りを「木犀堂」へ寄り、均一でリョサ『緑の家』(新潮文庫)を抜く。ご主人と話をさせていただき、堺正章さんのお姉上と、木犀堂の夫人とが交遊がある、と聞き、おどろく。動かなければ、大事な情報は入ってこないことを思い知らされる。
江の電で藤沢。今回も「極楽寺」で途中下車せず。「聖智文庫」さんをひさしぶりに訪問。貴重な話が聞けた。各種資料も「おみやげです」といただく。なんだか悪いなあ。
「ブ」も覗き、こっちは10数年ぶりになる「光書房」へ。ここもうなぎの寝床式の奥深い店舗に、びっしり良書を揃えている。絵葉書もあり。「しょうなんどう」「太虚堂」を含め、藤沢は、めずらしく良質の古本屋群が健在の町だ。目的は果たせなかったが、行ってよかった。