昨日の「わめぞTV」を見ていたら、退屈くんと向井くんが不忍ブックストリート一箱古本市」の初期のことを話していて、いろいろ憶い出すこともあり、興味深かった。いまでも毎日チェックしている「本街探偵」という読書ブログの一覧を作ったのが退屈くんで、「一箱」のリンク集も彼が始めた。すごい男だ。いまでは本人をよく知っているから、忘れていたが、そうだよ、当初はもっとおじさんがやっているのかと思っていた。なにしろ「(旗本)退屈男」だもの。40以下ってことはないと思っていたが、当時、彼はまだ二十代前半だった。
一箱古本市のおもしろさの本質を、素人が本を売るイベントという基本線はもちろん、「同じ趣味を持つ、どこかにいる他人」を見つけて、顔合わせをさせたことが大きいと向井くんが発言。ぼくは第一回、乱歩の裏手に出たのだが、そこにNEGIさんもいたという。ハンドルネーム「にとべさん」も、このとき大阪から参加して、隣りで一緒に売ったのだった。第一回の売り上げ一位は内澤旬子さんだったという。そうだったか。授賞式を「ほうろう」店内でやって、ぎゅうぎゅう詰めで大変だった、というのはなんとなく思い出した。でも、ぼくたちはプレゼンターとしてバックヤードというか裏にいたんだ。
乱歩の助っ人がカンバラさんで、あまりにステキな女性だったので、そこに出た男連中が、みな一箱のことを書いたブログにカンバラさんのことを書いていた、と退屈くんが報告。これはぼくも書いたので覚えている。そうだよ、「ほうろう」のメンバーだったんだ。いまは「信天翁」をご主人とやっておられる。
不忍の一箱スタートは2005年4月末。あれから7年か。もっと昔のような気もする。いろいろあったんだなあ。
今日は午後から阿佐ケ谷。「ラピュタ」で、丸山誠治監督、池部良主演「坊っちゃん」を見る。見る前から、ああ、池部良なら「坊っちゃん」にぴったり、と思っていたが、見たらぴったりだった。ほか、マドンナが岡田茉莉子、赤シャツが森繁久彌山嵐小沢栄太郎、野だいこが多々良純、ばあやの清は浦辺粂子と鉄壁の布陣。とくに森繁の赤シャツは、キザで、好色で、小ずるくて、とまさに「森繁」節。宴会で軽快に踊る多々良純に軽演劇の匂いあり。風景として、明治の東京、そして松山の町並みの再現が、作り物でなくみごと。随所に洒落た改変もあり(最初の鯉、最後の鈴虫)、娯楽作として及第点。よくできているなあ、「坊っちゃん」という話は。
最後の「鈴虫」というのは、マドンナの岡田が池部に惹かれて、縁日で買った鈴虫の籠をプレゼントするというエピソードを、最後へんで監督は挿入している。もちろん原作にはない。だいたい「坊っちゃん」の傷は、若い主人公が、若い美女を目の前にして、心を動かさず、恋愛にも発展しないということだ。映画「坊っちゃん」では、池部ぐらいハンサムな若者がいて、岡田のような美女がいて、何もないのはおかしいと、創作して二人のほのかな交情を描いている。現実的なんだな。
「コンコ堂」で大貫妙子のCDが大量に500円と800円で出ていて、「シューティング・スター・イン・ザ・ブルー・スカイ」ライブを買う。永田博編『明治の汽車』は400円。
「ささま」では、東谷護『進駐軍クラブから歌謡曲へ』みすず1050円、都築政昭の小津本『ココロニモナキウタヲヨミテ』朝日ソノラマ525円を買う。「ささま」店内から荻窪駅まで、4人ぐらい知っている人に会う。
丸谷才一『輝く日の宮』半分まで再読。為永春水を読みたくなる。