「軽」二題

okatake2012-04-03

昨日は、国立駅前で上京している左岸洋子さんと待ち合わせ、近くの喫茶で喋る。静かなる風雲児ユーセンくんが新雑誌を準備中で、そこにサガンさんのエッセイも連載される。そのタイトル画をぼくが担当することになった。イラストの発注というのがうれしいじゃないか。サガンさんの愛らしい風貌を目に焼き付け、帰宅して、忘れぬうちにタイトルイラストを仕上げる。気に入ってもらえるといいのだが。
本当は三月末までに書く予定だった「信濃毎日」書評、今朝、早起きしてなんとか送付。やれば一時間もかからない仕事を、引っ張るのは悪いくせだ。平松洋子さんの最新エッセイ集『なつかしいひと』新潮社について書く。なんともいえない空気感のただよう名文で、たしかにこれなら、編集者が書かせたがるわけだと納得する。
井上ひさし『悪党と幽霊』中公文庫を拾い読む。40ページ近くある「軽演劇の時間」は、浅草フランス座へ入るいきさつから、ショーの構成、踊り子の給金、笑いの作り方まで、具体的かつ有用な、まったくみごとな「軽演劇」論。エノケンの座付き作者で、戦死した菊谷栄についても多く筆を費やして貴重。こうなると、精興社の活字、クリーム色の本文用紙まで美しく見えてくる。この井上の中公文庫エッセイシリーズも、いまや見なくなった。江戸東京博物館で見た「タワー」展で、明治中期に、イギリス人スペンサーが軽気球に乗る興行が大当たりしたと知ったが、默阿弥の浄瑠璃台本に「風船乗評判高閣」があるという。ここに円朝も登場する。筑摩の明治文学全集「默阿弥集」に収録。読んでみたい。また、ひとつ、賢くなった。「軽」のつく二題に感心。
二度、トークで呼ばれてでかけた富士吉田「ナノリウム」の中植さんから手紙あり。月光寺で物件を見つけて、古道具と古本の店を始める、という。月光寺はぼくも行ったが、繁栄から取り残されたおかげで昭和の匂いを残すなつかし町。古本屋はぴったりだが、さて店売りは厳しそうだ。応援したい。
http://tamagazou.machinami.net/fujiyoshidaekishuhen.htmというサイトには、富士吉田から月光寺の町がたくさん紹介されているが、見ればわかる通り、不自然なほど人の姿が見えない。
週刊読書人」から京須偕光『落語家 昭和の名人くらべ』の書評依頼があり、本が届く。見本紙二紙も同封されていて、連載で「上方芸能」が取り上げられている。いま、大阪発の雑誌はこれだけ。そうか「大阪人」はなくなったのか。「上方芸能」の編集者で広瀬依子という女性が出てくるが、ぼくの知っている広瀬依子だろうか。同姓同名か。たぶん違うと思うが、そうある名前でもない。「上方芸能」は原稿料なし、か。大学の先生とか、ほかで稼いでいる芸人ならいいが、フリーライターには厳しい。
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20120402-OYT1T00696.htm
午後から風雨強し。
数日前から、アマゾンにまったくアクセスできなくなった。なんでだろう。あ、いま復帰した。なんなんだ。あ、またダメだ。
内田裕也対談集の桃井かおりの回を読んでいて、1973年NHKで、丸谷才一原作「たった一人の反乱」がドラマ化されていたことを知る。桃井のほか、木村功田中絹代林隆三殿山泰司が出演。これは見たい。