「うめ吉」にひと目ぼれ

okatake2012-01-28

朝7時ジャストに目覚める。朝食たべていたら地震。ストーブを消す。
昨日はサン毎へ行く日なので、それを核に一日の行動を散りばめる。「趣味展」では永井竜男(と、そういう表記になっている)コバルト新書『女の靴』。けっこう珍しい。永井が「小説新潮」「オール読物」などに発表した中間小説集。「挿画入りの雑誌に掲載されたものばかり」と「あとがき」で言う。ここに、あるニュアンスを感じる。ちょうど移動の際中、永井の『石版東京図絵』を読んでいたので。大正の東京下町の気風、風景をこれほど写し出した作品も珍しいだろう。神保町界隈が出てくる。
サン毎の仕事を終え、次回の書評、柳沢みきお『なんだかなァ人生』新潮社と決め、Hさんに承諾を得る。隣りの「エコノミスト」でHくんと打ち合わせ。同誌で書評はひさしぶり。田中慎弥騒動をひっかけて、芥川賞直木賞関連の本を紹介することに。
銀座松屋古書市を覗く。ぼくは初めて。高級感あふれる展示。汚い本を並べた本棚を見てホッとする。しかし、見ている分には楽しい。河島舒文堂の若旦那がいたので挨拶。「背ぇ、伸びたんちゃう?」。でかい男なのだ。「○○さんには『壁』と言われます」(笑)。生田さんを見つけて、三愛ビルのドトールでお茶。一階、二階ともびっしり満杯だ。この銀座「ドトール」はブレンドが380円。生田さんと絵葉書のことあれこれ。あいかわず買いっぷりがすごい。そこで、あることを相談する。
ずいぶん前から、東京で「大阪王将」のギョーザを食べたいと思っていて(4軒ぐらい、行動範囲のなかにあるのだ)、新宿二丁目へ移動。「京都王将」の派手な展開に比べて、ジミな感じ。ギョーザ二皿に生ビール。やっぱり旨いや。ほろ酔いで、発作的に「末広亭」へ。芸術協会主催の席なので、出演者が地味。落語協会に比べ、二軍という感じは否めない。芸術協会主催の末広亭、平日の夜席が極端に客が少ない、危機的、と新聞で読んで応援しに来たのだ。しかし、団体が入って、この夜は満席。中入り前の遊三のところまでを聴く。なにしろ初めて見る芸人が多い。酔いもあって、半分くらいトロトロとまどろみにあったが、目が覚めたのが俗曲の「桧山うめ吉」。小作りの顔を白塗りにして、まだ歳はせいぜい30前後ではないか。三味線を抱えてちょこんと座った姿がまことに愛らしい。一発でファンになった。声もまだ鍛えられたというところまで行かず、マイクの力が必要だが、その弱点が男心をくすぐる。踊りも可愛くて、なんともよござんした。「うめ吉」一人で、この夜の「末広亭」、行った甲斐があった。あとで調べたら、「うめ吉」、倉敷出身。1966年12月生まれでした。
http://www.satoh-k.co.jp/ume/
落語では、痩身白髪の「蝠丸」の「時そば」がよかった。ラストの金勘定のところ、いっしゅん、トチったのかと思ったら、そうじゃない。新趣向のサゲだった。やっぱり、寄席に来なくちゃなあ。
帰宅すると、『古本道入門』増刷の知らせと、「新潮45」から書評依頼。エンジンがかかってきました。
川本三郎さんが北原白秋の評伝『白秋望景』(新書館)を上梓されました。ちょっと意外。でも読むのが楽しみ。もちろん、読みますとも。
古沢「五つ葉」和宏くんは、ついに『痕跡本のすすめ』を太田出版から。前の持主の書き込みを古本で楽しむという流儀は前からあったが、それを「痕跡本」と名付け、ジャンル化して、広めたのは五つ葉くんの功績。名づけるのがいかに大事か、がわかる。カラー図版をたくさん使って、1300円+税はお得感強し。
西部会館「中央線」展へ。昭和初期の個人の日記が7、8冊あって、2冊買う。昭和5年と15年。受験票や電報、写真など、たくさん挟み込みがあり、これをもとに解読していくのが楽しみ。函無しが500円、有りが1000円。そのほか、芸術新潮を二冊、岡本太郎青木繁
今日は早稲田古本屋街の取材。担当編集者Kくん、古書現世の向井くん、ともに風邪。「ヨーグルトを食べなさい」とアドバイスする。ぼく、ずっとヨーグルトを食べているせいか、今年の冬は風邪をひかない。お通じもいいですよ。

山田太一新作ドラマ。ノーコメント。