カルテット

昨日、BS朝日で、ドキュメンタリー「カルテットという名の青春」を、途中から見る。「ジュピター」という、桐朋出身の学生で作られた、まだ二十代の男女によるカルテットの三年半を追う。おもしろかった。それぞれ、世界的なコンクールで優勝するなど、若き実力者たちだが、海外留学をして、壁にぶちあたる。アンサンブルの難しさ、日本と西洋の違いなど、音楽の本質にかかわる問題を、さりげなくあぶり出す。
丸谷才一の新作長篇が、やっぱり日本人演奏者によるカルテットの話だったので、興味深く見た。彼らが師事するジュネーブ音楽院のタカーチ教授の指導がすばらしい。テクニックは完璧、音楽も美しい、しかし心からの声がない、と教授は彼らの演奏を聞いて言う。とくに、太郎くんへ、そう言う。「心のなかに虹を架けるだ」とアドバイス。「虹」を日本語で何と言うか聞いて、ちゃんと教授は「ニジ」と発音する。それでも、言っていることが伝わらないのを見て、教授が太郎くんのバイオリンを取り上げて、自分でカルテットと演奏する。これがすばらしい。太郎くんは感動して涙を流すのだ。「もともと美しい音楽なんですね。それを美しく弾く必要はないんですね」と、すぐさま、問題の急所を捉える彼もまた素晴らしい。彼らはいったんカルテットを休止し、またそれぞれが実力をつけて再開するという。そのときの演奏を聞いてみたい。番組の再放送を望む。
今日午後、笑芸好きの友人Iくんと国立でカラオケ新年会。Iくん、その場で即座にハーモニーをつけられるという特技あり。Iくんから娘にお年玉をもらった。すまないなあ。ロージナで二次会。楽しかった。
小山栄雅『梶井基次郎の肖像』を再読。梶井の東京での下宿を、いつも使っている『山手・下町散歩』(改訂のたび買うので三冊持っている)で確認したら、最後の下宿(飯倉片町)は、なんと、「キャンティ」のすぐ裏手だった。なるほど、たしかに島崎藤村旧居跡も近い。うかつだった。今度、探検してみよう。