哀愁のバキュームカー

okatake2011-12-27

今年最後の「ビッグイシュー」は、朝日文庫に入った荒川洋治『忘れられる過去』を。再々読ぐらいだが、やっぱりいいなあ。はっと立ち止って、気づかせる、そんな力がある。感心することしきり。こういう文章は書けない、と思う。で、ぼくの原稿も、荒川さんの文体に引き摺られてしまった。「あった、あった。」は、昭和31年に社会科副読本として小学生に配られた『わたしたちの東京』。都内中心部でも、まだ水洗便所は四分の一で、バキュームカー(このコトバが、原稿を書いているとき、思い出せなかった)の写真が掲載されている。今のコドモたちに、この写真を見せて、どういう車か、答えさせてみたい。いま見ると、哀愁があるなあ。バキュームカーの匂いは強烈で、町に入ってきただけで、わかった。近くを通る時は、息をとめて駆け抜ける。携わる人は、風呂に入っても、匂いが身体からぬけないような気がする、と書いているのをどこかで読んだ。『昭和三十年代の匂い』という本をぼくは書いている(学研新書)。さっぱり評判にならなかったが、なかなかいい本だった。ほんとうに町には、さまざまな匂いが満ちていた。雨上がりの土の匂い、というのもあった。
裏紅白の続き。
アン・サリー様「満月の夕
http://youtu.be/gO3geXZoW00
加山雄三「マイウェイ」
http://youtu.be/l0_skRLSY-w
越路吹雪愛の讃歌